vol.8 映画「きらきら眼鏡」池脇千鶴さん×安藤政信さん」編

インタビュー:伊藤さとり
インタビュー日:2018年8月7日(火)

ーー私は、安藤さんが出演している映画を立て続けに観たんです。「劇場版コード・ブルー」の新海先生役から、「きらきら眼鏡」でベッドで寝ている余命宣告を受けた病人の裕二役、撮影もすぐだったみたいで、体重を落とすのは大変だったのではないですか?

安藤:撮影まで2週間しかなかったので、とにかく食べなかったです。それしかなかったですね。


ーー本当に凄い。そしてこの作品で恋人役で共演してみてどうでしたか?

安藤:本当に千鶴は、演技が上手いじゃないですか!2週間でこの役を演じるのって、本当に大変なんですよ。だけど、それに甘んじていたら、絶対に怒られると思っていました。ちゃんと話した事もなかったので、しっかり演じないと𠮟られるって(笑)必死でしたね。

池脇:(笑)そんな風に思っていたなんて、知らなかったです。安藤君は、裕二さんそのものでしたし。お芝居しない時の安藤君と接するのは初めてで、凄く気さくで私は楽しかったです。それがあるからこそ、気兼ねせず、本当にこの人と愛し合っていたんだなっていう感じにスッと入れました。気持ちのいい現場でした。

ーーお互いの演技の仕方を見て、どう思いましたか?

安藤:台詞がスーって入って来る人だと思いましたね。聞いてて、もっと聞いていたいなって思うんですよ。本当に自然なんですよ。車椅子で押されている時とかも、スッって入って来る。やりやすかったですね。

池脇:主演で相手役の明海君と一緒に病室を訪ねていったシーンとかで、二人の親密さ、絆が見えると思うんです。彼が哲学的な話をするんですが、私はそれに聞きほれてしまう。彼への愛と尊敬の眼差しを私がかけられるように安藤君が自然に演じてくれるんです。

ーー声って重要ですよね。

安藤:喋りの間合いやテンポって重要だと思いますよ。苦手な喋り方って、やっぱりありますからね(笑)

ーー池脇さん演じるあかねは、本当は自分が癒されないといけない人なのに、癒してくれるカウンセラーみたいな喋り方をしますよね。その喋り方は、研究したのですか?

池脇:いいえ、してないです。ただ、台本に書かれた台詞というより、どうにか血の通ったあかねの言葉にしたいなっていう風に思っていました。一番喋っているのが私なので、会話している登場人物たちや見ている人たちにうるさく聞こえちゃったら意味がないとは、思っていました。皆は何気ない日常を過ごして、愚痴をこぼしたりしながら何気ない会話をしている。私だけが、正しい事をちゃんと喋ってしまうだけに、うるさいだろうなって思ってましたね(笑)


ーー確かに、そうですよね。池脇さんの喋りのトーンとオーラで、聞く人によっては、うるさく感じるような正しい言葉がナチュラルに感じられる。この映画が最後まで、引き寄せられていった理由ですね。難しい役だったと思います。

池脇:そうなんですが、そもそもの台本が、それを取っ払ってくれていたし、安藤君が引き出してくれたし、金井君の佇まいがあまりに自然だったので、“自然でいいんだ”って(笑)

ーー明海を演じた新人俳優の金井君と共演していかがでしたか?

安藤:自分がもう少し若かったら、こうゆう役をやりたいなって思うぐらい、彼に嫉妬しましたね。僕は、ずっと病室で動けなくて、だからこそリアルに明海に対して嫉妬してました(笑)彼は若くて、生命力が溢れていて、裕二に見えないところであかねとどう過ごしているんだろうって。

池脇:周りの方は“新人なので”って言いますけど、読み合わせの時から声が新人じゃないし“何でこんなに普通に喋るんだろう”って(笑)何も力が入ってないし、お芝居をしてみても、完成されている人だなって。上手くて怖かったです。

ーー池脇さんの映画デビュー作は『大阪物語』(1999)ですよね。

池脇:15歳でした(笑)

伊藤:安藤さんの映画デビュー作は『キッズ・リターン』(1996)ですよね。

安藤:あの時は、19歳ですね。この間、山谷初男さん(ジムの会長役)にお会いして、今一緒に共演しているのですが、この間挨拶したら“安藤君って、あの安藤君”って言われて(笑)“はい、そうです。僕のデビュー作で会長の役で出演されていて、共演させて頂きました”って言って、そしたら“だよね”って(笑)。すごく懐かしかったです。この映画では、モロ師岡さんと一緒ですし、何か最近、ボクシングシーンで出会った人たちとよく会いますね。

ーーデビュー当時の思い出を話してもらえますか?

池脇:とにかく、がむしゃらでした。デビューは15歳だったんですが、無我夢中で。何テイクもやって、正解もわからないけど、なんか空気が楽しくて(笑)大人に囲まれて、“ワー凄い!”って、“皆、カッコイイ”って思って、通っていましたね。

安藤:(北野)武さんの場合は、1テイクしか撮らないから“芝居って楽だなって”(笑)。本当に台詞を間違えようが、1テイクしか撮らないんですよ。それにナイターが嫌いだから、監督すぐに帰っちゃうし(笑)。武さんがテレビもやっているので、1週間撮影したら、1週間お休みとかもあったし。“めっちゃ、楽”って思っていたんです。だから他の現場に行ったら、全然OKが出なくて、怒られまくって“芝居って、大変だな”って(笑)。

ーー2009年には海外の監督チェン・カイコー氏と『花の生涯・梅蘭芳』でご一緒しているじゃないですか。

安藤:その時は、多少は経験を積んでいたので(笑)武さんの作品に出演した後に岩手のめんこいテレビ製作の「宮沢賢治生誕100年記念ドラマ 奇跡の少年」に出演したのですが、芝居が出来なくて本当に怒られて。プロデューサーの車の中で出来ない事が悔しくて号泣した事もありました。丁度、下宿先のおじさん役が『あの夏、一番静かな海に。』出演している河原さぶさんで、武さんの芝居メゾットと真逆だから、彼も“安藤君、僕も長年やってたけど、武さんのところに行くと逆に芝居をさせない、感情をのせたらNGだから、苦労したよ。だからその後、次の現場に入った時、武さんの現場リズムになってるから、ちょっと戸惑うんだよね”って(笑)まあ、僕の場合、それ以前の問題ですが。今やっているドラマで、丁度怒られていた時の音声さんがチーフとして居るので、メチャメチャ気まずくて(笑)

ーー確かに監督さんによって演出方法が違いますよね。

池脇:私も凄く怒られましたね。けんか腰になった事も(笑)

ーー人生を変えた出演作品ってなんですか?

池脇:強いて言えば『ジョゼと虎と魚たち』(2003)ですね。今までは、アイドルっぽい目線で見られていたのが、初めて女性からファンレターを頂いたんです。女性の方が観に行ってくれてた。妻夫木君がいるからなんですけど(笑)あの役を演じた事で、オファーも変わりましたね。

ーー作品としても素晴らしかったですよね。私は、ワンシーンワンシーン、曲も一緒に覚えているくらいです。池脇さんと安藤さんが、お互いを認識した作品は何ですか?

安藤:『リップスティック』(テレビドラマ:1999)と『ジョゼと虎と魚たち』。聡(妻夫木)と長崎で撮影をやってた時に、聡が“今度の映画の曲で、凄くいい曲なんだ”って「くるり」の曲を聞かせてくれて。それから、公開した映画を観に行って“池脇千鶴、スゲーな”って思った!

池脇:『キッズ・リターン』観ていますし、『69 sixty nine』(2004)も観に行って、いっぱい出演されているので、いっぱい観ているんですが、やっぱり会ってみないと。印象に残っているのは、『ストロベリーショートケイクス』(2006)とか自分との作品ですね。一緒のシーンが無いので、楽しみで(笑)作品を観た時のインパクトが強くって、中村優子さんとのシーンとか、二人の情けなくって、報われないやりとりが凄く泣けちゃって。

ーー私は、お二人が恋人役で共演する事自体が、とても嬉しかったです。しかも、作品で泣ける。この作品に出演を決めた理由は何ですか?

池脇:私は、企画書と台本を読んで“いいな”って。ただ、その時点では相手(裕二さん)役が決まっていなかったんです。それから、相手役が安藤さんに決まって“はい”って返事しました。

安藤:結婚して、子供が二人いるんで、選んでる場合じゃない。来た順からやってますね。貯金が無いから、必死なんです。今が一番必死かも(笑)

池脇:急に働き出したよね(笑)

安藤:演技も必死です。裕二と一緒ですね、“生きなきゃ”“食わせなきゃ”って(笑)。20代から30代の中盤までは“この監督とじゃないとやりたくない”とか出演作品を選んでた部分もありますが、40代になって知らない人ばっかりで、出会ってない役者もいて、作品を受け入れて、その作品をちゃんと最後まできちんとやり遂げると皆が喜んでくれる姿が半端なくって。舞台挨拶に行くだけでも喜んでくれるんですよ(笑)それが、凄くあるような気がする。

ーー私、覚えています。安藤さんが20代の頃の舞台挨拶で“もう勘弁して下さい”って言われて、スクリーンのカーテンに隠れた事がありましたよね(笑)

安藤:本当に苦手なんですよ(苦笑)

池脇:上海(第21回上海国際映画祭)にも来てくれましたよね(笑)楽しかった。

安藤:疲労感が半端ないんですよ(笑)でも、最近はある程度の期待には、応えようと思っています。

ーー池脇さんが出演作品を選ぶ基準は何ですか?

池脇:私は、安藤君と違って選んでます(笑)私がメインとかメインじゃないとか関係なく、自分が「面白いか、面白くないか」「観たいか、観たくないか」の台本ありきですね。無茶苦茶好きじゃなくても、私なりに間口を広げて、可能性を見たいので、やりたい監督だったり、知らない俳優さん達とも一緒に仕事をしてみたいと思えたらやります。

ーー『そこのみにて光輝く』(2014)もそうですか?

池脇:当時、私は菅田将暉君を知らなかったんです。名前を見ても、読み方がわからないし、写真を見ても「仮面ライダー」を見ていないので(笑)綾野剛君は知ってました。出演を決めたのは脚本が、すごく面白かったから“よし、やろう”って。

ーー私は『万引き家族』の池脇さんにも興奮し、あの役の大切さを勝手に痛感していました。

池脇:チョロっとしか出演してないのですが(笑)

ーー私は、たまらなかったです。

池脇:あの役はあの役で、自分と相反する役だったので。実は『きらきら眼鏡』よりも、もっときつい、ちょっとしか出演してないけど、私が一番嫌いな類いの人間だったから、私は高良君やメインの人たちの心情なので悔しいんだけど、本がいいし、是枝監督とも会った事がなかったので、やってみました。

ーー役者をやっている事の醍醐味を教えて下さい。

安藤:醍醐味ですか?感じた事あるかな。“やるしかない、これしかない”って思ってますが、まだわからないですね。取材とか本当に苦手なんですよ。舞台挨拶も正直に言えば嫌で嫌で“嬉しい”とか“気持ちいい”って『キッズ・リターン』から20年経ちますが、一度も思ったことがないんですよね(笑)

ーー私は、安藤さんと何回か舞台挨拶でご一緒させて頂いていますが、居るだけで安心します。本心の言葉でとても楽しい方なので。

安藤:最近だと、映画『GONINサーガ』(2015)と映画『花芯』(2016)でも一緒でしたね。

池脇:私は、これ(女優)しか出来ない。他の事をした事がないし(笑)台本をもらえた時は、求められている事が嬉しいし、面白い本に出会えたら“演じたい”って気持ちがわき上がるんです。それに同じ役ってないんですよ。皆別の人なので、想像するのは大変だけど楽しい、そこが面白みかな。こうゆう仕事は、そうそうないし、堂々と他の人になれる。私も安藤君と一緒で舞台挨拶とか苦手なんです。テレビとか舞台挨拶って丸裸になるじゃないですか、それが凄く嫌で(笑)でも、登場人物になれば、不思議と私自身に自信が生まれるんです。そこが、俳優を続けている理由かな。

 

『きらきら眼鏡』
公開日:9月15日(土) 有楽町スバル座ほか全国順次公開 ※9月7日(金)TOHOシネマズららぽーと船橋先行公開
劇場:全国にて
配給:S・D・P
公式サイト:https://kirakiramegane.com/movie/
(C)森沢明夫/双葉社 (C)2017「きらきら眼鏡」製作委員会

▼作品ページ
http://cinema.co.jp/title/detail?id=81957

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伊藤さとり(いとう さとり)

映画パーソナリティ。邦画&洋画の記者会見や舞台挨拶を週5回は担当する映画MCであり、年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。
TSUTAYA店内放送「WAVE-C3」で新作DVD紹介のDJ、ケーブルテレビ無料放送チャンネル×ぴあ映画生活×Youtube:動画番組(俳優と対談)「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、雑誌「シネマスクエア」コラム、スターチャンネルで映画紹介他、TV、ラジオ、雑誌、WEBなどで映画紹介のレギュラーを持つ。心理カウンセリングも学んだことから映画で恋愛心理分析や恋愛心理テストも作成。

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