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わたしたちに許された特別な時間の終わり

死後の世界。若い女性が、どこかの部屋でバスタブに繋がれている。“なんで自殺したの?”と詰問するデスマスクの男。“よく分からない”“増田壮太”と名乗るデスマスクの男は、“いのちの電話”を相手に理不尽な問答を繰り返す。女は隙を見て逃げ出す。所変わって、監督の太田が撮影するビデオ映像。生前の増田壮太が独り暮らしの家を引き払い、実家に戻るため、引っ越し準備をしている。太田の高校の先輩で、一時はメジャーデビュー間近という憧れの存在だったが、今は音楽で食っていけないことに絶望し、うつ病を患ってボロボロだった。生前、壮太と最後にユニットを組んでいた冨永蔵人と会話する太田。蔵人は高校の軽音楽部の先輩である壮太に憧れて音楽活動を始めた。しかし、練習では“エモーションが足りない”と責められてばかり。ライブ後、ダメ出しする壮太に、“音楽は楽しめれば趣味でいい”と不満を口にする。考え方の相違から、やがて2人は解散。2010年8月14日。壮太は地元のホールでライブを敢行するが、お盆だったため、客はわずか4人。終演後、壮太は路上に倒れ込む。やがて、壮太から介護ヘルパーの仕事に就いたと報告を受けた蔵人は、失望を隠せない。長野県天龍村に移住した蔵人は、村の文化祭で、打ち込み音楽を使ったユニークな演奏を披露し、村人たちから温かく迎えられていた。そこに太田とともに遊びに行っていた壮太は、打ち上げで何とも言えない表情を見せる。2010年12月、両親への遺言を録音すると、壮太は近くの公園で自殺した。享年27。“自分が撮影したせいで彼を追い込んだのでは?”と告白する太田に、壮太の両親は“親としては素の息子を撮影してくれる友人がいたって事だけでも感謝の言葉しかない。”と返す。そして葬儀。棺の中で安らかに眠る壮太の横顔。所変わって、どこかの分娩室。蔵人の妻が無事出産する。壮太が願ったハッピーエンドだった。

解説

2012年に自殺したミュージシャン、増田壮太を中心に、彼に憧れて音楽活動を始めた青年、友人で本作の監督を務めた太田信吾、3人の関係を描いたドキュメンタリー。山形国際ドキュメンタリー映画祭2013アジア千波万波部門出品作。フィクショナルなカットも織り交ぜながら、“表現とは何か、自由とは何か”を模索する。

2014年8月16日より

  • 配給
  • ノンデライコ
  • 製作国
  • 日本(2013)
  • ジャンル
  •  
  • スタッフ・キャスト