性的快感を得られない女性を若い医師が精神分析によって彼女の深層心理にひそむ謎を暴き出していくまでの過程を描く
汐見は都心のビルに診療所を持つ若く有能な精神分析医である。ある日、診療所に若く美しい女性が現われた。彼女は、音楽が聞こえない、と言うのである。彼女はテレビやラジオを聞いても、セリフや物音は明瞭に聞えるが、伴奏音楽だけが耳もとから消えて索莫としてしまう。それから彼女・麗子は自分のことを話し出した。彼女の家は地方の旧家で、東京の女子大を出ると、東京で貿易会社に務めたこと、現在の恋人は同僚の江上という青年であること、少女時代、親の決めた婚約者俊二に処女を奪われ、そのことを江上に告白できず悩んでいるのだと話した。治療は回を重ねていった。そして、汐見は麗子が音楽が聞こえないというのは嘘で、実は江上とのセックスを感じないということを知った。そこで汐見は治療を自由連想法にきりかえ、心に浮んだことをすべて語らせることにした。
解説
脚本・監督は「新兵隊やくざ 火線」の増村保造、撮影も同作の小林節雄がそれぞれ担当。(キネマ旬報 全映画作品データベースより抜粋)