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麦笛

大正の中頃、倉敷の松山寺の息子伸夫は読書や詩作にふける日を送っていた。彼の詩友で髪結の息子表は、環境のためか早熟だった。伸夫は姉照代が愛ももたずに嫁いだ気持が分らなかった。権現さんの茶屋の娘お玉が寺にお詣りに来て、下駄の鼻緒を切った時、伸夫は彼女に不思議な圧迫感を覚え、手拭を投げあたえた。お玉は表に伴われ礼に来たが、伸夫の無礼な態度に腹を立てた。表のとりなしで一緒に海岸へ行ったものの、お玉と表の親密げな様子に伸夫は逃げる様に立ち去った。芝居見物の時識らぬ娘に対する表の態度に伸夫は怒り、決闘状をつきつけた。しかし決闘場へはお玉が来て、激しく伸夫をなじった。悶々の時を過して、ふと本堂へ行った伸夫は、賽銭箱から金を盗んでいる凄艶な女お松を見たが、その平然とした様子に茫然とした。伸夫はお松の後を家迄つけて行き、我知らず彼女の下駄を盗って了った。こっそり返しに行ったが、お松につかまり争ううちに懐の短刀をつかんでいた。伸夫は姉に全てを打ち明け、短刀を預けて寺へ帰った。伸夫の詩が雑誌に載った祝に伸夫と表はお玉の茶屋で乾盃した。数日後、表が病気との報せに伸夫は急いで病床に見舞った。痩せ衰えた表はお玉との連絡を頼んだ。お玉に会うと伸夫は彼女との間には何か異った感情が流れるのを感じた。表は伸夫にお玉のことを頼んで死んだ。一緒に墓参した二人はかつて三人で行った海岸へ出た。二人は激しく抱き合ったが、伸夫はその瞬間お玉をつき放し海へ向って表の名を呼んだ。

解説

室生犀星原作の『性に目覚める頃』から「或る女」の豊田四郎と「泉へのみち」の池田一朗が共同で脚本を書き、豊田四郎が監督に当る。撮影は「女性に関する十二章」の三浦光雄。出演者は「潮騒(1954)」の青山京子、久保明、太刀川洋一、「女給」の越路吹雪、「めくら狼(1955)」の志村喬、「浮雲」の中北千枝子の他、三好栄子、浪花千栄子、浜田百合子、藤原釜足など。

1955年5月3日より

  • 配給
  • 東宝
  • 製作国
  • 日本(1955)
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