颱風とざくろ

桑田英子たちの大学庭球部に、コーチの坂本一雄がやって来た。彼が大学の先輩ということもさることながら、ひきしまった身体、真っ黒だがハンサムなマスク、これが英子たちをして一雄をコーチとして迎えた最大原因だった。だが、野放図で、とてつもない心臓には英子たちもへいこうだ。女子の更衣室へ平気で入って来たり、英子たちが、冗談に女子シャワー室へ誘ったりすると、男性のシンボルをかくそうともせず、素っ裸で入って来たりするからだ。秋になって、英子は一雄の誕生日に招かれて坂本家にやって来た。坂本家は産婦人科医で、信太郎・房子の両親に、弟の二郎、妹のけい子の五人家族だ。英子の家は葬儀屋と知って一雄は喜んだ。生命の誕生をつかさどる一雄の家と、生命の終焉をつかさどる英子の家は相性がいいと言うのであった。その日、英子を迎えに来た弟の貞三と、一雄の妹けい子はすぐ仲良しになった。それから、日が何日か過ぎ去った。一雄が雪山に出かけて行った。その夜は強い風が吹き、暗闇でざくろが一つ風に負けまいと懸命にしがみついていた。英子は白い乳房を抱きながらひとり想った。「彼がその逞ましい肉体で私を押えつけ、私の女を開眼させてくれたっていい。……彼が山から帰って来たら私は私の身体を彼にあげよう……」しかし、ざくろをなぶっていた風は山では吹雪となり、一雄をのんでしまった。春になって一雄の凍死体が発見され、一雄の山日記にはこう書かれてあった。“オレは、たとえ英坊を押えつけても、英坊を奪ってくるべきではなかったか……」。英子は急に動作のニブイ女になってしまった。大学を卒業し、テレビ局につとめた。その間、英子は父母を喜ばせるために見合をしたが、てんで気乗りがしなかった。夏になって一雄の墓参りに出かけた美子は、そこで一雄の弟二郎に会った。建設会社につとめる二郎は、一雄と同じようにたくましく、そしてハンサムで、野性の匂いがむんむんした。二郎はその墓の前で、英子にヌード写真をつきつけた。英子の心に巣喰っていた一雄の想い出はいっぺんにふっとんでしまった。それから、再び坂本家に出入りする英子の姿があった。それは生き生きと、はつらつとしていた。

解説

石坂洋次郎の同名小説(講談社刊)を、「伊豆の踊子(1967)」の井手俊郎が脚色し、「けものみち」の須川栄三が二年ぶりに監督した青春もの。撮影は「伊豆の踊子(1967)」の逢沢譲。

1967年9月15日より

  • 配給
  • 東宝
  • 製作国
  • 日本(1967)
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