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悪党(1965)

十四世紀、南北朝の動乱期、高師直が、足利将軍家の執事として一世の権威を誇っていたころのこと。ある日師直は、侍従から、今は田舎武士、塩冶判官高貞の妻となっている絶世の美女顔世の話を聞き、すっかり恋の病におちいって、早速侍従に顔世との間をとりもつように命じた。さらに師直は、自ら高貞の館にしのびこみ湯あみする顔世のあで姿を見て恍惚となった。これを境に師直の顔世への欲望は絶ちがたくなり、兼好法師に恋文を代筆させて顔世に届けた。しかし顔世の返事はなかった。師直はさらに二度目の恋文を顔世に送った。ところが、これが発覚し、塩冶一族は思案にくれてしまった。今を時めく執政の実力者の願いを無下に拒んでは、塩冶一門にどんな災難がふりかかるかわからないのだ。そんなある夜侍従が顔世のもとに忍びこみ、師直を慰めてくれるよう懇願した。顔世はしかたなく、師直の、道ならぬ恋を戒めた返書を師直のもとにとどけた。即座に師直は塩冶判官に、即刻出雲へ帰り北国黒丸を討伐せよという命令を下した。高貞の出征中に、力ずくでも顔世をわがものにしようというのだ。だが真から顔世を愛する高貞は、何とかこの運命を打開しようと決心した。そんな折も折、事態の険悪になるのを恐れた侍従が再び、判官の館にしのびこみ、愛する夫のためにかたくなに師直の願いを拒みつづける顔世をそそのかした。が、これを一部始終盗み聴いていた高貞は、侍従を捕えて縄をかけ今一度顔世の愛をたしかめた。やがて意を決した高貞は、叔父山城守宗村の助力で顔世をともなって出陣した。しかし、これを不服とする師直は、高貞に謀叛の下心ありと進言して、追手をさしむけた。やがて幕命による塩冶判官追討の大軍がくだされ、今はこれまでと覚悟を決めた高貞と顔世は最後の別れに侍従を前にして激しい抱擁をかわした。高貞は再び潮のような討伐隊に向って出陣し、顔世は宗村の力をかりて自決した。待ちわびる師直の前に顔世の首がおかれた。その時半狂乱になって引きすえられていた侍従が口を開いた「百万の軍勢で攻めようとも人の魂はとれませぬな」と。うろたえる師直の姿を、すべてを拒否し愛に生きた顔世の首が静かに見つめているようであった。

解説

谷崎潤一郎の戯曲“顔世”より「鬼婆」の新藤兼人が脚色・監督した戦乱もの。撮影もコンビの黒田清巳。

1965年11月21日より

  • 配給
  • 東宝
  • 製作国
  • 日本(1965)
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