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異邦人の河

ビルの谷間のゴミの中に倒れている皮ジャンを着た青年が、起きあがって歩きだす。私鉄の踏切で何者かにドスで刺されてしまったこの青年が、傷口を押さえながら歩道橋を上っていくと、少女が川に身投げするのが目にはいったのであった。青年は、少女を助ける。彼女は朝鮮語をしゃべる−−。山本と名のる自動車修理工のこの青年は、李史礼という本名をひたかくしに隠して生活している在日朝鮮人で、少女はやはり方順紅という名前の在日朝鮮人であった。史礼は順紅にも自分が在日朝鮮人であることを隠していたが、病院に見舞いにきてくれた彼女に「俺は李史礼だ……朝鮮人だ」と、ついにほんとうのことを告白してしまう。退院した史礼は、順紅といっしょに行方不明になっている彼女の父親を捜すが、見つかりそうもない。そんなある日、史礼は自動車修理工場の経営者から「修理工場を新しく一軒ふやそうと思っているのだが、おまえをそこの主任にバッテキするつもりだ。来週中に、戸籍謄本をもってこい」と言われる。迷った史礼は、「オレは帰化するぞ、よく見てろ!」と言って、順紅の目の前で外国人登録証明書を破いてみせる。そんな彼を順紅は、「パンチョッパリ(半朝鮮人)!」と言って罵倒した。そのあと突然史礼は順紅と情交する。そのうち彼は、韓国から日本に逃亡してきたジャーナリスト池法石と知りあいになり、啓発されて民族意識にめざめるようになるが、池はKCIAに殺されてしまう。順紅の母も死んだ。母の遺骨を胸に抱いてはるばる対島までやってきた順紅は、海の彼方にかすかに見える祖国の方に骨箱を高く差し出して、「オモニ!見なさい!……祖国よ」と叫ぶのだった。自動車修理工場をやめた史礼は、今度は朝鮮人であることを堂々と名のって別の自動車工場につとめた。そしてある日、黒塗りのベンツに乗っているKCIAのメンバーにドスをつきつけた史礼は、民衆の声を聞くことのできない彼の耳を剃り落としてしまうのだった。

解説

日活で蔵原惟繕、神代辰巳、藤田敏八、田中登、加藤彰、曽根中生などの助監督をやっていた29歳の李学仁(イー・ハギン)の処女作。在日朝鮮人が監督する最初の長編劇映画である。緑豆社は、李とカメラマンのアン・スンミンとが作っていた独立プロダクションで、「異邦人の河」は中村敦夫が製作費を出して誕生した緑豆社の第一回作品。李の国籍は韓国、安の国籍は朝鮮民主主義人民共和国。主演の朴雲煥(パク・ウナン)は、「キャロル」のメンバーだったジョニー・大倉で、彼はこの映画の音楽も担当している。朴はここで日本人の仮面をはずし、はじめて本名を名のったのである。(16ミリ)

1975年07月01日より

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  • その他
  • 製作国
  • 日本(1975)
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