北京バスターズ

ミュージック・バーを経営するカーズ(唐大年)は恋人のマオマオ(武拉拉)に会い、中絶を迫るが、マオマオは泣きながら雨の中立ち去っていき、そのまま姿を消す。中国最大のロック・スター、崔健(本人)と彼のバンドは、当局の規制で公共の場でのコンサートの中止を余儀なくされ、さらに練習スタジオとして使用していたスペースからも追い出されて、新しい場所を探しはじめた。失業中の作家ダーチン(武拉拉)は、詐欺師に全財産を奪われた友人の画家イエローをなんとか助けようと、犯人を見つけ出すためにチンピラを雇おうとするが、頼んだ相手と喧嘩になる。泥酔し、店を出た2人は、道端でへたり込む。カーズはマオマオの行方を探し回っていた。憤懣やるかたない彼は、自分のバーで働く若い女をつかまえて強引に交わる。やがて麻薬に溺れ、流産するマオマオの幻想を見たりするようになる。その果てにバーに来た見知らぬ客を殴り倒し、警察に逮捕される。崔健は非合法のコンサートを催し、『最後的抱怨(最後の恨み)』という新曲を披露する。カーズは出産し、頭を剃って丸めた。一条の光が射す。廃虚のビルの薄暗い廊下でカーズは物思いにふける。崔健と彼のバンドの演奏場面で映画は終わりを告げる。

解説

現在中国だけでなくアジアを代表するロック・ミュージシャンとなった崔健が全面的に製作に協力した、現代の北京における若者の群像をドキュメント・タッチで活写した映像詩。登場人物こそ配されてはいるが、物語を追うというよりも、撮影当時の“北京のいま”を映しとろうとした野心的な試みのなされたフィルムといえる。崔健が自分自身の役を演じるほか、主人公の若きミュージック・バーの経営者、彼が妊娠させた恋人、さらに彼の周囲の男女である、失業中の作家、その友人の詐欺にあった画家、主人公が強引に寝るバーで働く女性……といった登場人物が現実生活そのままのごとき振る舞いで画面に登場し、現実と幻想のはざまを生きながら、それぞれの“北京の私生児”としてのエピソードを紡いでいく。崔健の迫力あるスタジオ演奏とライヴ・ステージに加え、北京の郊外でゲリラ的に行われたらしい野外コンサートなど、どの場面もが生々しさをもって観客に訴えるあたりはみどころになっている。監督は“中国第六世代”とでも呼ぶべき新鋭張元。製作にあたっては「Sunless Days」等で知られる監督のシュウ・ケイと香港・台湾映画界で活躍する名カメラマン杜可風が参加し、杜可風は映像顧問としてもクレジットされている。同作は93年の東京国際映画祭では、田壮壮の「青い凧」と並び、中国代表団の引き上げ騒ぎを起こした当の作品であった事は注目すべき点である。ちなみに本国ではいまだに上映が禁止されていることに加え、監督の張元は他の7人の監督たちと共に事実上の国外追放処分を受けている。

1994年11月12日より

  • 配給
  • ネットワーク・フィルムズ
  • 製作国
  • 中国 香港(1993)
  • ジャンル
  •  
  • スタッフ・キャスト