ヨシワラ

江戸が東京と変わって間もない明治初年のことであった。美しい小花は破産の汚辱をそそぐため父が切腹し果てた後、弟を養うため吉原に身を売った。父の代から仕えていた下男の勇は人力を曳きながら画を学んでいる青年で、何とかして小花を救い出そうと心掛けていたが金を作る目当てもなかった。その頃某国軍艦が入港し、乗組のポレノフ中尉は同僚を取り締まるため吉原に赴いた。そこでは小花が泥酔した士官を拒んで自殺しようとしている。彼は士官を懲らして小花を救ったが、これが縁で二人は愛しあうようになり、故国に戻って景れの結婚式を挙げる日を夢みながら幸福に浸る日が続いた。しかし二人の幸福は永くは続かなかった。ポレノフは上陸して怪外国人から書類を受け取り艦が再び入港した時それを持参せよと艦長に命ぜられ、その間は吉原へ行く事を禁じられた。ポレノフは書類を手に入れたが、周囲に監視の眼が光っているので家から持ち出す事ができず、折から秘かに彼を訪ねた小花に内容を秘して書類をことづけた。勇は兼ねて官憲にポレノフの動静を見張るよう指令を受けていたが、小花が書類を懐に家を出るのを見ると、知らずとは云え旧主の娘が売国奴となるのを黙視できなかった。彼は国家の為に自分の希望も幸福も犠牲にする事を決心する。書類は無事に官憲の手に戻ったが、同時に哀れな小花は間諜として銃殺を宣告された。だが小花は知らずに犯したのだ。彼女に罪はない。勇は小花を救う手段に尽きて無実を証明し得る唯一の人ポレノフの許に駆けつけた。ポレノフは無事に帰艦したが熱病で臥っていた。だが恋人の生命が危ないと知った彼は、すぐ跳び起きて海にとびこみ岸に泳ぎついてそのまま法廷へ急いだ。けれども時は既におそかった。小花は刑を執行された後だった。ポレノフは激しい熱にうなされ、幻に小花との婚礼を描きつつ後を追って死んだ。

解説

「南方飛行」「外人部隊(1933)」のピエール・リシャール・ウィルムと「新しき土」の早川雪洲が「恋は終りぬ」の田中路子を相手に主演する映画で、モーリス・デコブラ作の小説をアルノルド・リップ、ウォルフガング・ウィルヘルム及びダポワニーが協力して脚色し、我国には初めての新鋭マックス・オフュルスが監督に当たったもの。助演者は「別れの曲」「罪と罰(1935)」のリュシエンヌ・ルマルシャン、「戦いの前夜」「みどりの園」のローラン・トゥータン、「どん底」のアンドレ・ガブリエロ及びカミーユ・ベール、サイヤール、ポーレエ等である。戦後上映されたフランス映画の第1号。(戦前に輸入していたが、上映禁止だった)

  • 配給
  • 三映社
  • 製作国
  • フランス(1936)
  • ジャンル
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  • スタッフ・キャスト