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早春(1936)

イギリス一流のデザイナーであるジェニファーは、夫に死に別れてから十年余り、女手一つでイレーネとババの娘二人を育てて来た。彼女はモンテカルロで得意先の男爵夫人に招かれた時、インドの探検家として有名なコーベット卿に紹介された。一目で彼女に惹きつけられた卿は、その日直ちにジェニファーの後を追ってパリで求婚した。満十六才になる娘の母親である事を打ち明けると、却って卿はそれを嬉んで、共にロンドン郊外に祖母と暮らしている二人の娘を訪れた。ジェニファーの長年の苦労を知っている祖母は、彼女に再び女としての幸福が来たのを喜んだ。妹娘のババも無邪気に卿の立派さを賞讃したが、イレーネは母が亡き父の他に愛する男を得たのを許せない気がするのであった。オペラ劇場の座席でも、彼女はまざまざと母が自分達を離れて卿を思う心で一杯なのを見た。彼女は次第に笑わなくなり、ただコーベット卿を憎むようになって来た。卿はそれを年頃の娘のヒステリックな利己主義と考えたが、ジェニファーには娘の悲しみが身にしみて判るのだ。彼女は娘を悲しませるよりは彼と別れようと決心した。しかし老母は彼女を抱きしめて、この幸福を取り逃がせば、もう再び彼女には女の幸せは生まれないと説き聞かせた。その言葉に励まされてジェニファーは卿と結婚する決心ができた。妹のババは素直に母の結婚を喜んだが、イレーネはもうたまらなかった。結婚式の朝早く、霧のたちこめた森を抜け、拳銃を持って教会堂へ到いた。母を連れて自動車を降りたコーベット卿は、恐れげもなくイレーネの銃をじっと見た。そして何も気づかぬ母の手をとって教会へ這入った。イレーネは青ざめ、気が抜けた様に歩き出した。そしてそのまま池の中へ静かに身を沈めた。ババはその朝イレーネが居ないのに気づくと、羊飼いのフィリップと二人で森の中を探し廻った。漸く二人はイレーネを池から救い上げた。イレーネはただ自分を恥ずかしいと思うのであった。「他の人には内緒にしておいてね」という彼女に、ババは泣きじゃくりながらうなずくのだった。

解説

目下アメリカMGMにあって活躍しているラインホルト・シュンツェルが「お洒落王国」や「カルメン狂想曲」などのミュージカル畑から転向して監督・製作した映画で、エファ・ライトマン作舞台劇『処女イレーネ』をシュンツェル自ら原作者と協力脚色したものである。主なる出演者は「第九交響楽」のリル・ダゴファー、新人ザビーネ・ペータース及びゲラルディーネ・カッツ、舞台からのカール・シェーンベックの四人で、舞台女優ヘドウィッヒ・ブライプトロイ、子役だったハンス・リヒター、「自殺倶楽部」のロマ・バーン、エルザ・ワグナー等が助演している。音楽は「ワルツ合戦」「別れの曲」のアロイス・メリヒャルが作曲・指揮に当たり、キャメラは「第九交響楽」のロベルト・バベルスケが担任している。なおジプシー音楽で知られているジョルジュ・ブーランジェが特別出演してヴァイオリンを弾いている。

  • 配給
  • 東和商事
  • 製作国
  • ドイツ(1936)
  • ジャンル
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  • スタッフ・キャスト