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『マイ・ブルーベリー・ナイツ』ウォン・カーウァイ監督来日インタビュー

2008.03.06

“ウォン・カーウァイ、初の旅するラヴストーリー in USAを語る!”
出席者:ウォン・カーウァイ監督
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』ウォン・カーウァイ監督来日インタビュー
初の完全英語ダイアローグ、撮影地はニューヨーク、メンフィス、ラスベガス…どっぷりアメリカである。『恋する惑星』『2046』の監督ウォン・カーウァイが、魅惑の歌声で絶大な人気を誇る歌姫ノラ・ジョーンズを女優デビューさせたことでも話題を呼び、2007年第60回カンヌ国際映画祭のオープニングを飾った『マイ・ブルーベリー・ナイツ』は、失恋の痛手から旅に出たヒロインが見知らぬ人々との出会いを通して、自分自身を見出して行くストーリー。『コールド マウンテン』のジュード・ロウ、『グッドナイト&グッドラック』のデイヴィッド・ストラザーン、『ナイロビの蜂』のレイチェル・ワイズ、『クローサー』のナタリー・ポートマンという豪華な面々を共演者に揃え、この実力派俳優たちの新たな魅力を巧みにスクリーンに映し出したウォン監督にお話を伺った。曰く「俳優が変わればエンディングも変わる」とは…。


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『花様年華』『2046』の展開と比べて、今回はノラ・ジョーンズとジュード・ロウ演じる主役の2人に未来があるような感じがして、とても画期的だと思いました。
■ウォン・カーウァイ:「俳優が違えばおのずとエンディングも変わってくるものだよ。私は基本的に俳優を見てストーリーを書いているんだ。今回は8週間の撮影だったけれど、最初の7週間でエンディングはこれしかないと決心したんだ。ノラ・ジョーンズとジュード・ロウ2人の立ち居振る舞いや性格を見て、彼らの結末はこうなると決めたわけだけど、むしろ、彼ら2人が自分たちの結末を決めたようなものだね」
2人の出会いに始まって再会に至る今回の作品は、旅をして元の場所に戻って来るということで、今回のテーマ〈距離〉を描いたということですか?
■ウォン・カーウァイ:「この映画のテーマは〈距離〉だけれど、もちろんそれは男女間の〈距離〉というのも一つだね。でも、もっと大事なのは、ある人が持っている理想とする自分との〈距離〉のことなんだよ。自分が望んでいる幸せを掴むまでの〈距離〉ということになるかな。ノラ・ジョーンズはこの映画の中で様々な名前で出てくるね、最初はエリザベス、その次はリズやベスと名のっている。そうやって名前を変えて行くというのは、自分にあまり自信がないからなんだ。自分をかわいそうだと思っているし、別の自分になりたい、つまり変身願望があるからなんだと思う。最後にニューヨークに帰ったときには、エリザベスに戻るんだけど、それは自分に対して自信を取り戻したということを象徴しているんだよ」
その自分を取り戻す旅の過程で、エリザベスはジュード・ロウ演じるジェレミー宛に手紙を書きますね。電話やEメールという手っ取り早い手段ではなく、敢えて手間がかかり、相手に届くのに時間のかかかる手段を選びますが、それはやはり彼女の心の旅だからでしょうか?
■ウォン・カーウァイ:「最初はエリザベスにとってジェレミーは悩みを打ち明ける相手に過ぎなかったんだ。だから彼女は相手からの返事を期待していない。一方的に自分の悩みを打ち明ける対象が必要だったんだ。だから、ポストカードを書き続けたんだよ。自分の所在を明かしてないということは、返事を貰うことを期待していないからなんだ。なぜかというと、彼女は前の恋人にふられたことで、期待をするとその分失望も大きくなるんじゃないかと不安なんだね。自分に自信がないんだ。そういう意味では、今回の作品のタイトルは『ある女性からのポストカード』と変えてもよかったかもしれないね」
エリザベスは旅の途中で様々な人々と出会いますね。演じるデイヴィッド・ストラザーン、レイチェル・ワイズ、ナタリー・ポートマン、もちろんジュード・ロウも含めて経験豊富な実力派俳優が揃っていますが、誰もが今まで見たことのない顔を見せてくれています。彼らだからこそ、あのキャラクターたちが生まれたのでしょうか?
■ウォン・カーウァイ:「私は基本的に脚本を書き上げてから俳優を探してくるのではなく、俳優その人を見てから脚本を書くんだ。たとえば、ナタリーはギャンブラーを演じたけれど、彼女を見てからキャラクターを膨らませて行ったんだ。デイヴィッドやレイチェルについても同じだよ。私が脚本を書くときには、出演者の顔を見て動きを見て、彼らの魅力を最大限に引き出して、今まで見たことのない一面、もう一つの顔を見せることを常に考えてストーリーを膨らませて行くんだ」
その中でレイチェル・ワイズが演じたスー・リンという女性は、『花様年華』『2046』に登場したスー・リンチェンに通じるキャラクターなのでしょうか?
■ウォン・カーウァイ:「いや、それはまったく違うんだ。スー・リンの方がずっと強いよ。実は劇作家のテネシー・ウィリアムズに敬意を表して、彼女が登場するテネシー州メンフィスを舞台の一つに選んだんだ。私はずっとテネシー・ウィリアムズを尊敬していてね。スー・リンには彼の『欲望という名の電車』の主人公に通じる強さがあると思うんだ」
では最後に、本作の公開を楽しみにしている日本のファンへメッセージをお願いします
■ウォン・カーウァイ:「来日できて嬉しく思っています。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』をぜひ楽しんでください」
ウォン・カーウァイ作品に登場する女性たちは誰もがみなセクシーで美しいのですが、とくにハイヒールを履いた姿の美しさは絶品です。そこで、インタビュー後に聞いてみました。「ハイヒールを履いた女性がお好きですか?」と。答えはもちろん「イエス!」でした。そして、ハイヒールを履いて歩くことの大変さも充分理解していらっしゃるようですが、今回もノラ・ジョーンズがかなりのヒール高に挑戦しています!! 甘くとろけそうなキス・シーンと併せて彼女の足下にも注目です。
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『マイ・ブルーベリー・ナイツ』
配給:アスミック・エース エンタテインメント
公開日:2008年3月22日
劇場情報:日比谷スカラ座ほか全国東宝洋画系にて
公式HP:http://www.blueberry-movie.com
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あらすじ
失恋したエリザベスはカフェのオーナー、ジェレミーに元彼の部屋の鍵を預け、ついでに愚痴も聞いてもらう。ジェレミーは落ち込む彼女にお手製のブルーベリー・パイをふるまうのだった。エリザベスはカフェに通うようになるが、ある日突然姿を消す。旅に出た彼女は、ウエイトレスをしながらメンフィスやラスベガスでこれまでの人生観を覆す出会いをする…。
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プロフィール
ウォン・カーウァイ
■ウォン・カーウァイ
1958年7月17日上海生まれ。5歳で香港に移住。脚本家からスタートし、監督第1作は88年の『いますぐ抱きしめたい』。独特の映像、文学的なセリフ、卓越した音楽センスなど、その才能に世界が注目する。97年の『ブエノスアイレス』でカンヌ映画祭最優秀監督賞を受賞。主な作品に『欲望の翼』『楽園の瑕』『恋する惑星』『天使の涙』『花様年華』『2046』など。
取材・文:齊田安起子