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【ベルリン国際映画祭】各国マスコミ話題騒然!『靖国 YASUKUNI』

2008.02.18

ベルリン国際映画祭フォーラム部門
ドキュメンタリー映画『靖国』
Yasukuni
現在開催中のベルリン国際映画祭にて、フォーラム部門出品の日中合作ドキュメンタリー映画『靖国』の上映が現地時間2月11日、12日、14日と行われた。
上映には、欧米各国の記者も多く押し寄せ、「靖国神社」の動向はアジアのみならず世界中が注目していることを裏付けさせる盛況ぶりだった。映画『靖国』は監督の李纓が10年以上の年月をかけて完成させたドキュメンタリー。旧日本軍の軍服に身を包み「天皇陛下万歳」と猛々しく叫ぶ人たち、境内で催された追悼集会に抗議し参列者に袋だたきにされる若者、「勝手に合祀された魂を返せ」と迫る台湾や韓国の遺族たち、そして靖国神社のご神体である日本刀を作る刀匠・・・「靖国刀」がもたらす意味を各国メディアはどのように捉えたのだろうか。
2月10日(現地時間)におこなわれたプレス試写は、超満員。同じ第2次大戦での敗戦国という歴史的背景をもつドイツだからか、驚くほどの作品への関心の高さをうかがわせた。
2月11日、プレミア初上映。立ち見がでる大盛況ぶり。20分も遅れて上映開始がスタートしたため、上映終了後の質疑応答は、10分ほどの短いものになってしまう。それでも会場の熱気は最高潮。
観客から「この作品は、日本での公開は難しいでしょう」との質問。
李纓監督が「いいえ。今年4月に東京4館を皮切りに全国で公開されます!」と答えると、会場全体からは、地響きのような溢れんばかりの拍手が巻き起こった。


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<地元メディアによる『靖国 YASUKUNI』の批評>
2008年2月10日 ベルリン日刊紙 “TAGESSPIEGEL” (ターゲスシュピーゲル)掲載 
執筆者 Helmut Merker (ヘルムート メルカー) 

宗教的そして国家的追悼の場である東京の”靖国神社” ー 問題を孕んだ組み合わせである。死者の追悼と戦争の仮面、個人の祈りと政治的英雄崇拝。異民族を犠牲者とした上での英雄的行為を行った兵士達に関わることである。李纓の映画は、問題になっている日本の戦没者記念施設に対して、性急な判断を下そうとはしない。戦死した日本の軍人達を追悼するのは、彼らが引き起こした苦しみを忘れなくても可能なのである。にもかかわらず、日本は未だに戦争責任を認めることをしていない。それゆえ、重点が簡単にズレるのを可能にする。
李纓は、打ってつけの人物を中心に置いている。刈谷直治は、世俗的騒々しさを越えたところで生きている。しかし、この世界では「記憶に刻むことと忘れ去ること」、「罪と許し」に関わる争いは絶えることがない。
2008年2月10日 ベルリン日刊紙 “taz” (タッツ)掲載
執筆者 Bettina Allamoda (ベッティナ アラモーダ)

いろいろと議論されている日本の靖国神社では、百年前から ~そして又最近 ~ 時間が止まってしまった感がある。1986年に「日本精神の砦」として設立され、第二次世界大戦中は軍国主義の宗教的中心となり、今日でも日本の国粋主義者達にとっては神聖な場である。中国人監督李纓はその作品「靖国」で、この神社の歴史と現在を記録している。そこには、警察部隊や敬礼する多様な軍人グループから、カメラが廻っている前で殴られて血を流している抗議デモの人までいる。李纓は、何度もいろいろな反戦デモの場面、あるいは無条件の英雄崇拝と、それが様々に利用されるのを映し出す。例えば、中国、台湾、韓国の人々の権利を守ろうと、それらの親族の死者を、勝手に行われた合祀から解放しようとする仏教の住職、さらには問題になった小泉首相の参拝。映画で最後の刀を作っている神社の刀匠、刈谷直治は、質問にめったに答えない。その彼が「靖国刀は機関銃をまっ二つに切ることができる」と言う場面がある。神社が際立っているように、寡黙な88歳の彼も伝統的な技に長けている。
映画も最後の部分は非常に寡黙である。歴史的出来事の場面の白黒の史料写真が次々に現れ、その背景に、ヒットラーのポーランド侵略50周年記念日のために作曲されたヘンドリック ゴレツキの交響曲のパッセージが
重々しく響く。
日刊紙 Neues Deutschland (ノイエス ドイチュランド) 2月11日
執筆者 Heinz Kersten (ハインツ ケルステン) 

日本の特攻隊は、第二次世界大戦末期にドイツの決死隊さえも手本にさせられたと云われる。彼らの魂は、神と同格の天皇の為に戦死した総ての兵士の魂と同じように靖国神社に宿っていると、今日でも多くの日本人は信じている。国粋主義者、軍国主義者にとって神聖だとされている、この犠牲者への追悼の場について、1989年以来東京に住む中国人監督 李纓は、記録映画「靖国」を制作
し、(ベルリン映画祭)フォラム部門で第五回目の参加作品としている。全体をまとめるものとして、神社の儀式の為の刀を作る最後の刀匠がある。戦争映画の断片が、靖国神社で賛美される侵略を思い起こさせる。
抗議デモをする若者はめちゃくちゃに殴られ、首相は熱狂的に歓迎される。多分、(ドイツ極右政党)NPD 支持者達も、”戦没将兵慰霊の日”をこのように祝いたいと願っていること
だろう。
『靖国 YASUKUNI』
配給:ナインエンタテインメント
公開:2008年4月
劇場情報:新宿バルト9、Q-AXシネマ、銀座シネパトスほか全国にて公開