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『潜水服は蝶の夢を見る』 マチュー・アマルリック インタビュー

2008.01.15

「日本のファンが、ジャン=ドーの“生”をどう受け止めるのか興味あるんだ」
出席者:マチュー・アマルリック
『潜水服は蝶の夢を見る』 マチュー・アマルリック インタビュー
突然の脳梗塞に倒れ、順風満帆の人生から一転、左眼以外の身体的自由を奪われてしまう男、ジャン=ドーの“生”を、かっこよくも人間くさく演じたマチュー・アマルリック。日本ではまだ決して知られた存在ではないが、本年の賞レースを賑わすと目されている彼に話を聞いた。
なお、第65回ゴールデングローブ賞において、本作は監督賞、外国語映画賞に輝いた。


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ジュリアン・シュナーベル監督との出会いから教えていただけますか?
■アマルリック:「スピルバーグ監督の『ミュンヘン』に出演していた時に、プロデューサーのキャスリーン・ケネディから封筒を手渡されたんだ。その中には本作の脚本が入っていた。『潜水服は蝶の夢を見る』はとても有名な本だし、驚いたね。ジュリアン・シュナーベル監督についてもよく知っていたから、彼からアメリカへ招待を受けた時は嬉しかった」
そこで、映画のこと、役柄のことを話されたわけですか?
『潜水服は蝶の夢を見る』 マチュー・アマルリック インタビュー■アマルリック:「そう、てっきりホテルで話するんだろうと思っていた。そうしたらニューヨークからどんどん離れて、シュナーベルの別荘に連れて行かれたんだ。ちょうど感謝祭の時期だったかな。4日間、ドライブしたり、料理を楽しんだり、彼のアトリエに行ったりもして一緒に時間を過ごしたんだ。彼は、他の人がしないアプローチ方法をとる人なんだけど、実際に同じ時間をその人と過ごしてみて、本当に楽しいかどうかを判断するのさ。パーソナルなこともじっくり語り合って、“共犯関係”が出来上がっていったんだ」
ジャン=ドーの役どころは、脳梗塞で倒れ、左瞼以外の全身が麻痺しているにもかかわらず、意識と知力は元のまま、というものですが、この難役にどうアプローチしていったのでしょう?
■アマルリック:「悲劇的な状況におかれた人間ではあっても、“聖人”ではない。つまり、病床にあっても頭の中ではまだまだ美人を誘惑してやろうと考えたり、焦燥感にかられて身勝手な反応をしたりと、不完全なひとりの“人間”であったジャン=ドーと自分を重ね合わそうとした。あと技術的なことだが、口の中に“ある器具”を入れて、口が歪むようにしたんだ。それと右眼を縫い付けるメイクかな。決して毎日5時間かけての特殊メイク、なんてしなかったんだよ」
先ほど、シュナーベル監督は「他の人がしないことをする」とおっしゃいましたが、撮影中もそんなエピソードが?
■アマルリック:「とにかく彼はどんな時でもキャメラを回すんだ。用意周到に準備して、なんて方法は決してとらないんだよ。だから出演者はみんな、いつでも“準備OK”でないといけなかったんだ」
では最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
■アマルリック:「今回、実際に日本に行って観客のリアクションを見られないのは本当に残念だ。好奇心からかもしれないが、この映画を日本人はどう受け止めるのかを見たかった。死生観の部分でね。例えばスペインでは深刻に悲劇的に受け止められたし、アメリカでは明るい希望を見出していたように思う。だからこそ、映画に対していつも連帯感を持って接してくれる日本人が、この映画をどう見るか、興味があるんだ。おまけに日本の映画ファンは女性が多いというしね。それもボクにとっては嬉しいことさ(笑)」
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『潜水服は蝶の夢を見る』
配給:アスミック・エース エンタテインメント
公開:2008年2月9日
劇場情報:シネマライズほか全国にて
公式HP:http://www.chou-no-yume.com/
(c) Pathe Renn Production-France 3
あらすじ
ジャン=ドミニク・ボビーは病室で目覚めた。医師や看護婦がやってくる。だが、おかしい。意識ははっきりしているのに、自分の言葉が通じない。しかも、身体全体が動かない。唯一動くのは左瞼だけ。そんな彼に、言語療法士アンリエットが瞬きでコミュニケーションをとる方法を教えてくれる。そして彼は、瞬きで自伝を綴り始める。
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プロフィール
『潜水服は蝶の夢を見る』 マチュー・アマルリック インタビューマチュー・アマルリック
1965年、仏オー・ドゥ・セーヌ生まれ。84年にオタール・イオセリアーニ監督作『Les favoris de la lin』で映画デビュー。87年、ルイ・マル監督『さよなら子供たち』で撮影に関わる。96年『そして僕は恋をする』に出演、アルノー・デプレシャン監督と出会う。『キングス&クイーン』(04)ではセザール賞主演男優賞など各賞に輝いた。その後、『ミュンヘン』(05)でハリウッド映画に出演、近年は映画監督業にも進出している。
取材・文 川井英司