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『ぜんぶ、フィデルのせい』ジュリー・ガヴラス監督 インタビュー

2008.01.11

“名匠コスタ・ガヴラスの実娘”ジュリー・ガヴラス監督 インタビュー
出席者:ジュリー・カヴラス監督
『ぜんぶ、フィデルのせい』ジュリー・ガヴラス監督 インタビュー
1970年フランス、パリ。弁護士のパパ(ステファノ・アコルシ)と女性誌の記者のママ(ジュリー・ドパルデュー)、やんちゃな弟フランソワたちと優雅に楽しく暮らしていた少女アンナ(ニナ・ケルヴェル)。ところがパパとママが共産主義に目覚め、アンナの生活は一変。不満だらけの毎日に。こんなことになったのは、ぜんぶ、フィデル・カストロのせい!?
激動の70年代フランスと、ちょっぴり理不尽に見える大人たちの変化を、9歳の少女の目を通してコミカルに描いた『ぜんぶ、フィデルのせい』
時代に翻弄されながらも、子供なりに成長し、順応していく少女の姿をユーモラスに描いたのは、女流監督ジュリー・ガヴラス。『Z』、『ミッシング』を手がけた名匠コスタ・ガヴラスの実の娘であるサラブレット監督にお話をお聞きしました。


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文学と法学を学びながらにして、何故、映画の道を選んだのでしょうか?
■ジュリー・ガヴラス監督(以下、ジュリー監督)「物語を作ることが好きなのですが、それを表現する手段は映像しか考えられませんでした」
本作を撮ろうと思ったきっかけは?
■ジュリー「原作を読んでみたのですが、少女の視点で70年代を描いている点が面白いと思い、映画化しようと思いました」
70年代になにか思い入れがあるのですか?
■ジュリー「フランスでは70年代はとても重要な時代で、良い悪いに関わらず、議論のテーマになるのです。ただ70年代を語ろうとした場合、複雑ですし、大人たちはそれぞれ思い入れがあるので客観性がありません。少女の目を通してこの時代を見れば、距離を置くので、子供特有のナイーヴな視点で、この時代のポジティブな面もネガティブな面も映し出してくれるのはないかと思いました」
アンナの両親は己の信念を貫こうとするが為に、一見、我侭に見えてしまうのですが、監督はアンナの両親をどう思いますか?
■ジュリー「両親の良いところを最後まで残しておこうと思いました。確かに彼らは不器用で失敗も多いけれど、子供への愛情は最後まで変化していません。強いパッションを持っている親が、子供を育てながらそれを貫くのは難しいことですが、子供たちも親の変化を子供なりに消化していくのだと思います」
それでも共産主義の影響をモロに受け、デモにも参加させられるアンナはちょっと不憫では?
■ジュリー「小さい子供があの環境の中で学んでいくことが大切なのです。子供たちがいろんな状況を見て、自分でいろんな人生をチョイスできるようになることが重要だと思います。アンナは親に決められた空間で生活をし、そこに幸せを感じていました。でも別の世界に投げ出され、その世界を直視して成長していくのです」
なるほど。そんなアンナの環境の変化を食事で上手く表現していたと思うのですが、やはりこだわったのでしょうか?
■ジュリー「物語の主人公は子供です。子供にとって生活の中で食べるものはとても大切です。子供の生活は家、学校、友達が主ですが、そのどこにも欠かせないのが食べ物です。子供だからいろんなところへ行けなし、難しい本も読めないし、複雑な映画を見てもわからない。子供たちが素直に受け入れられるのは、様々な国の料理だと思います。料理を通して、好奇心の目も開いていくと思いました」
子供だけでなく、特にアンナのお母さんですが、女性の生き方も描かれていますね
■ジュリー「70年代においてフェミニズムはとても重要です。今では結婚して子供を生んでからも仕事をするのは当たり前ですが、あの時代は子供がいるのに働き続けるなんて酷い母親だと非難されました。この映画の主人公が男の子ではなく女の子なのは、その部分を引き継いでいくという意味合いを含んでいます」
では、最後にお父さんであるコスタ・ガヴラス監督は本作を見ましたか?見ているのであれば、どのような感想を言われましたか?
■ジュリー「両親とも見てくれました。地中海気質の人たちで、子供が4人いるのですが、女性は私だけです。たった一人の娘に対して、他の息子とは違う特別な愛情を持って育ててくれました。だからこの作品を見たときも客観的には見ていないと思います。でも、“良かったよ”って言ってくれました」
<プロフィール>
ジュリー・ガヴラス監督
1970年生まれ。コスタ・ガヴラスの実娘。フランスとイタリアで広告用映画、テレビドラマ、長編映画のアシスタントを務める。数本の短編とドキュメンタリー映画を製作。本作が初のフィクション長編映画となる。
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『ぜんぶ、フィデルのせい』
公開日:2008年01月19日
劇場情報:恵比寿ガーデンシネマほか全国にて順次公開
配給会社:ショウゲート
オフィシャルサイト:http://www.fidel.jp/
取材・文:伊藤P