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『シルク』 フランソワ・ジラール監督 インタビュー

2007.12.04

日本人の俳優は僕のインスピレーションの源。今後も彼らと作品を作りたい。
出席者:フランソワ・ジラール(監督)
『シルク』 フランソワ・ジラール監督 インタビュー
映画、演劇、オペラ、音楽フィルムと、様々な分野で活動し、国際的にも高く評価されているフランソワ・ジラール。オスカーを受賞した『レッド・バイオリン』では、持てる才能を全て発揮させ、日本でも熱烈なファンを獲得した。08年公開予定の最新作、『シルク』が第20回東京国際映画祭のクロージング作品として上映され、来日した監督に話を伺った。短い来日中の貴重なインタビューとなった。


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19世紀のフランスと日本を結ぶという壮大なスケールの物語ですが、この作品を撮ろうと思ったきっかけは?
■フランソワ・ジラール(以下:FG):「まず原作にとても魅了されました。他に類を見ないような濃厚な物語だったので、非常に惹かれました。また、おっしゃるように、フランスと日本という二国を行き来する旅路の物語でもあります。私にとって、異文化に触れるということは、非常に大事なテーマだということもあって、この原作を選びました」
『シルク』 フランソワ・ジラール監督 インタビュー元々、日本についての知識や興味はおありだったのですか?
■FG:「知識はありましたが曖昧なものだったので、この映画のために入念なリサーチを重ねました。幸いスタッフに日本の作家や高い知識を持った人がいたので、より現実的になりました」
主人公のエルヴェは、妻を愛しながらも日本人の少女に惹かれますが、あれは愛だったのでしょうか?
■FG:「とても興味深い質問ですね。この映画には、二つの愛が描かれていますが、愛にも多面性があるのではないかと思います。多面性というのは対照的でぶつかり合う種類のものだと思うんです。妻のエレーヌと日本人の女性が出てくるのですが、エレーヌは妻として夫(エルヴェ)を愛し、エルヴェも妻を愛している。それを惑わすように日本人の少女が登場して、対照的な側面がぶつかり合うような愛の形というのが垣間見られると思うのですが、私にとってはエルヴェが日本人の少女に抱く愛情というのは妻への深い思いを象徴したもので、実際は少女を愛していたのではなく、妻に対する愛情を人間化したのが少女だったのではないかと考えています。妻と少女は、一つの愛の二つの側面だと私は理解しています。最後の手紙のエピソードは、少女に魅了されている自分に苦しむ夫を妻が解放させるのだ、という気持ちで描きました」
日本人キャストはどうやって選びましたか?それぞれの印象を教えて下さい。
■FG:「私は、この俳優が好きだから役を与えるというのではなく、その役に一番合った俳優を選ぶタイプの監督です。役所広司さんは、私が原十兵衛という役に求めていた内面的な強さと貫禄という要素を持ち合わせているということで選びました。中谷美紀さんは、美しい人だという印象がありました。表面的な美しさだけではなく、内面的にも美しい、神々しい人です。スピリチュアルな美しさを秘めているのに魅了されましたし、彼女の才能に衝撃を受けました。エルヴェが恋をする少女を演じた芦名星さんは、まだ経験が浅い方なのですが、全くセリフがない非常に難しい役柄を見事に演じ上げてくれましたし、まだ発揮されていない才能を見出すことができました。撮影中も、映画のことが何も分からない中で女優として、人間として成長していく姿を見るのが微笑ましかったです。國村さん他、日本人キャストは皆さん真剣で、偉大な方々でした。彼らは私のインスピレーションの源ですし、彼らともう一度仕事をしようと、今企画しているところです。」
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『シルク』
配給:アスミック・エース エンタテインメント
公開:2008年1月19日
劇場情報:日劇3ほか東宝洋画系にて
公式HP:http://www.silk-movie.com/
(C)2006 Jacques-Yves Gucia/ Picturehouse Productions
■あらすじ
19世紀フランス。製糸工場を営むエルヴェは、アフリカから蚕卵を持ち帰ることに成功する。富を得た彼は美しい女性、エレーヌと結婚し、幸せな生活を送っていた。そこに再び蚕卵買い付けの話が。行き先はアフリカより更に遠い日本だった。
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■プロフィール
『シルク』 フランソワ・ジラール監督 インタビューフランソワ・ジラール
1963年カナダ、ケベックに生まれる。舞台、オペラ、CMなど幅広く活動している。1993年に『グレン・グールドをめぐる32章』が、それまでの形式を破った伝記映画として高い評価を受ける。『レッド・バイオリン』(98)では、最優秀音楽賞を受賞。本作は長編映画3作目である。
取材・文: 南野望里子