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『グミ・チョコレート・パイン』 黒川芽以インタビュー

2007.12.04

「”不思議ちゃん”でいいんだなと思ってからは、自分の思うままにできたかな」
出席者:黒川芽以
『グミ・チョコレート・パイン』 黒川芽以インタビュー
大槻ケンヂの青春大河小説をケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)監督の手で映画化した『グミ・チョコレート・パイン』。その中で主人公・賢三が憧れるヒロイン・美甘子を演じたのが、黒川芽以だ。タイトルのじゃんけん遊びに例えるならば”チョコレート”の速度で青春を駆け抜けたい賢三を焦らせる存在として、堂々たる演技を見せてくれている。では彼女は何を思って、この役を演じたのだろうか? 彼女自身の話も交えながら聞いてみた。


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黒川さんは美甘子をどんなキャラクターだと思って演じましたか?
■黒川:「美甘子に限った話じゃないですけど、学生時代って女の子の方がちょっと精神年齢が大人だったりしますよね。その典型が美甘子かなぁと思っていて。でも美甘子の場合は自分の好きなこと――ちょっとマイナーな映画のこととかを語るとすごく熱くて。そんな内に秘めた熱さ、情熱があるタイプでもあるんです。それだけじゃなくて、賢三の妄想の中にも出てきたりとか、いろんな側面があるんですよ。だから演じるにあたっては、意外と”不思議ちゃん”で終わっちゃってもいいんじゃないかなと思ってたんです。掴めたようで掴めてないとか、「あれは本当に喜んでいたのか?」とか、「実は悪女なのかな」とか、観ている人にそういう想像がいっぱい巡ればいいなと思ったんですよ」
確かにしっかりしているかと思えば小悪魔的な面を見せたり、何を考えているのかわからなくなるようなシーンもありました。そんな不思議な美甘子を演じるときに意識したことはありますか?
■黒川:「精神年齢が上だからといって見下す感じにはしたくなくて、自然とそうなってしまうぐらいにしたかったんです。で、妄想の中の美甘子はやっぱり男の子が想像した「こうであってほしい」っていうのがいいんだろうなとか、そういう(いろいろな側面を演じる)難しさはあったんですけど、「”不思議ちゃん”でいいんだな」と思った時からは、本当に自分の思うままにできたかな。精神年齢が上で男の子のことを暖かく見守っているって感じは自分に似てたりもするので、そこからは入りやすかったですね」
黒川さんも男子たちを温かく見守っていた?
■黒川:「そういう風によく言われるし、そうだったと思います。小さい頃から仕事しているのもあって、男の子とかがじゃれあって遊んでいるのを見ると、なんか微笑ましく「うん、うん」って見ている感じだったんです(笑)」
“不思議ちゃん”ということは、それだけ内面を見せない演技になるわけですよね。その点は難しくなかったですか?
■黒川:「元々(賢三にとって)「こうであってほしい」という理想を描いたのが美甘子だったりもするから、深く考えるよりもワンシーンワンシーン、その時の気持ちとか、ちょっと大人っぽかったり、でもうちに秘めた情熱があって映画のことを語ると熱かったりとか、そういう基本ラインを変えなければ、あとはもう自由にやろうって思って。だから特に難しく考えなかったですね」
KERA監督から演技に関する指示はありましたか?
■黒川:「本当にちょっとした、細かいことだけですね。名画座のシーンで「”名画座座り”をやってほしんだよ」とか言われました。でも私は前の席に足かけるなんて全然信じられなくて、「いいんですかー?!」とか言ったりしてました。KERAさん自身がけっこう少年ぽいところがあったりするんで「KERAさんが描いている美甘子ができたらなぁ」と思ったりもしました。舞台畑の方なんで今まで会ったどの監督さんよりもリハーサルを綿密にやったりして、すごくいいコミュニケーションをとれました」
今回の劇中の年代が1986年でしたが、その時代の印象は?
■黒川:「洋服とかの違いもあったんですけど、恋愛をするときにケータイとかメールとかない頃なんで、手紙で伝えたりするじゃないですか。あとは電話をするにしてもケータイじゃなくて家に電話。ケータイじゃなくてお家に電話かかってきたときのドキドキ感とか、そういうのが難しいかな、でも面白いなと思いました」
賢三を演じた石田卓也さんの印象は?
■黒川:「今また戻したんですけど、当時はすごく体重を増やしてこの作品に臨んでいて、本当に賢三のまんまでした。普通にしていても賢三だったんですよ、あの時は。すごいなって思いました。毎回お弁当を2つ食べてたんですけど「もう喰えねー!」とか言いながらがんばってて(笑)。演技に対しても、賢三みたいな役をやっているので考えてないように見えて、意外と芯がしっかりしている人なんで、尊敬する部分も多かったです」
KERA監督が黒川さんを評して「器用で、演技の引き出しをいろいろ持っている」とおっしゃっていたそうですが。
■黒川:「そう言われるのは嬉しいですね。そうなりたいと常に思っているので。やっぱり引き出しがいっぱいある人になりたいし、1つの役のイメージに固まりたくないですね。いい人の役ばかり、悪い人の役ばかりって感じで、わかりやすくなりたくないんです。だから引き出しが多いって受け取られていたならばすごく嬉しいです」
黒川さん自身も美甘子以上に女優として活躍されていますよね。そんな中で賢三が感じたような焦燥感を、黒川さんは感じることがあるんでしょうか?
■黒川:「この仕事をしている人はそういうものを感じることがあると思うんですけど、私はあんまりないんですね。特に今は全然感じないというか、そんなことよりもとにかく仕事が楽しくて「悩んでいる暇なんかない」って思っちゃっていて。ポジティブだし、あんまり落ち込まないし、毎日楽しいし。すごくいい時期にあるんでしょうね。だからずっとチョキを出してるんじゃないかなって、そんな風に思っています」

衣裳協力:haco.(フェリシモ) 0120-055-820
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『グミ・チョコレート・パイン』
配給:東京テアトル
公開:2007年12月22日
劇場情報:テアトル新宿ほか全国にて順次公開
公式HP:http://www.gumichoco.com/
(C)2007「グミ・チョコレート・パイン」製作委員会
■あらすじ
1986年、東京。高校2年生の賢三は、親友のカワボン、タクオらと夜な夜な集まっては、酒を飲みつつアンダーグラウンドなロックを聴く日々を送っていた。「他の奴らと俺たちは違う」と思いながらも、結局は何もできていない3人。そんなある日、賢三が趣味の名画座めぐりをしていると、映画館で偶然に、同じクラスの憧れの女の子・美甘子と出会った。突然の邂逅に慌てながらも賢三はなんとか彼女と会話することに成功し……。
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■プロフィール
黒川芽以黒川芽以
1987年、東京都生まれ。97年にNHKドラマ「鏡は眠らない」でドラマデビュー。その04年の『問題のない私たち』に主演、映画デビューを果たす。その後も数々のドラマ、映画に出演し、04年のテレビドラマ「ケータイ刑事 銭形泪」、06年の『ケータイ刑事 THE MOVIE』で一躍脚光を浴びることに。今後も『山のあなた~徳市の恋~』『子猫の涙』など、公開待機作が多数。また07年10月より「愛の迷宮」「パセリ」の2作の連ドラに主演している。
取材・文:井上真一郎