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『サルバドールの朝』マヌエル・ウエルガ監督インタビュー

2007.09.25

出席者:マヌエル・ウエルガ監督
※WEB媒体合同取材
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恋人を危険にさらしたり、武装して銀行を襲うことが許されるはずもない。『グッバイ、レーニン!』のダニエル・ブリュールが演じたサルバトールは、その志にかかわらず愚かな若者だった。が、それ以上の愚行は、暴力団まがいの警察や不当な裁判も含め、恐怖と暴力で人を押さえつけることだ。極めて政治的に真実はねじ曲げられ、25歳の若者は見せしめとして処罰される。
劇場映画はこの『サルバドールの朝』で2作目となり、ビデオやTV、ドキュメンタリー、オリンピックやオペラの演出など、多彩な才能を発揮しえいる俊英マヌエル・ウエルガ監督にお話を伺った。


監督はドキュメンタリー映画、舞台演出など様々な表現方法をとって来たわけですが、今回なぜ一般的な「映画」を撮影しようと思ったのでしょうか?
■マヌエル・ウエルガ監督(以下、監督):「『サルバドールの朝』を撮ろうと思ったキッカケは私の考えでは無く、本作のプロデューサーの提案からだった。彼は元々ドキュメンタリーではなく「映画」として作ろうと思ってた、私もそれに賛成したよ。なぜドキュメンタリー映画ではないのか?それはドキュメンタリー映画だと観てくれる人が限られてしまうんだ。私たちは多くの人に観て貰いたかったし、興行的にも成功するようなメインストリームの作品を作りたかった。なのでスペイン映画では破格の700万ユーロ(日本円にすると約11億3千万円!!)を制作費にあてたんだ。
キャスティングにも力を入れ、主役には国際的にも有名な俳優ダニエル・ブリュールを起用し「スペインだけではなく世界で見られる作品にしたい!」と切なる願いがあったよ。もしこれだけの素材が揃わなかったら日本の方は本作を観てくれただろうか?日本で公開するのも、作品の力+ダニエルの魅力が関係していると思うんだ。多くの方に観てもらって、何か感じ取ってほしいね」
弁護士とのやりとりや看守とのやりとりがとても感動的でした。あのようなことは全て事実に基づいたことですか?
■監督:「100%実際に起こったことだよ。これはもちろんドキュメンタリーではなく映画として作っているわけだから、時間の流れなどを考え、ストーリーとして感動を高める構成にはしているよ。ただ、事実は捻じ曲げてはいないし、起こったことをそのまま再現し意味することを伝えようとした。例えば脚本を書くとき、当時の事件を知っている証言者全員にインタビューをし、その証言と彼らが語ってくれた記憶を元に脚本を忠実に書き上げたんだよ。事実を曲げるのは“倫理上”やっていけないことだしね。
サルバドールの家族は事件から33年経った今でも、“正しい判決”と願って再審請求をしているんだ。それは、あの事件が“合法的な暗殺”と思われているからなんだ」
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リアルに描くということで、脚本を作る段階からかなり時間が掛かったのでは?
■監督:「脚本を書き上げるまで、インタビューも含めると大体1年かかったね。原作のフランセスク・エスクリバノ著書「サルバドールの朝」があってそれを参考にした部分もある。あの本はかなり詳しい事実が書かれてあるからね。ただそれをコピーしたのではなく、私たち自身で新たに練り直して脚本を書いたんだ」
サルバドールは悲惨な最後を迎えてしまいますが、彼の周りには常に彼を救おうとする人達が溢れていましたね。人をそこまで惹きつける魅力はなんでしょうか?
■監督:「自分の家族が死刑を宣告されたら是が非でも助けようするのは当然のことだと思うんだ。サルバドールの裁判は茶番劇で、公正を欠くものだった。その中で彼の有罪性がきちんと証明されず死刑になった。彼が“警官殺し”と判決されたけども、あれは自分の身を護るために発砲したんだ。しかも彼が放った銃弾ではない可能性だってあったんだよ。
確かに彼は銀行強盗などして「罰せられても当然だ!」と思われるかもしれない。ただ彼はテロリストではなく、労働者の逃走を手助けするための“接収”をしていたんだよね」
最後に一言おねがいします。
■監督:「この映画を観ることによって過去のスペインを知ると思う、そして今現在のスペインはどうなっているんだ?と疑問に思い調べてほしい。そして全てが過去ではなく今現在も続いていると知ってほしいね」
『サルバドールの朝』
配給:CKエンタテインメント【kinetique】
公開:2007年9月22日
劇場:シャンテ・シネほか全国にて順次公開
公式HP:http://www.salvadornoasa.com/
取材・文:若