『コラソン de メロン』井上和香&西川貴教 インタビュー

2008.05.23

“キャラクターづくりの秘訣は、自然体の演技”
出席者:井上和香、西川貴教
『コラソン de メロン』井上和香&西川貴教 インタビュー
リストラされたOLの泉と無職・ヒモ男のヒロミの、ダメダメだけれど幸せな日々を描いた田中誠監督作品『コラソン de メロン』。シュールでコミカル、でもどこか切なく愛しいこの作品でW主演となった井上和香と西川貴教は、泉、ヒロミそれぞれのキャラクターを見事に演じ切ってみせた。その姿はまさにハマリ役といったところだったが、果たして二人は自分の演じたキャラクターについて、どんなことを思っていたのだろうか。


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お二人ともかなりダメダメなキャラクターを演じられましたが、演じる役を聞いたときの感想は?
■井上:「私が演じた泉は本当に一途なコで、ヒモを愛しているということに若干の抵抗がありましたけど(笑)、本当に一生懸命なんだなというのは台本を読んでいてわかりました」
■西川:「病気持ちで、ヒモ、無職といいとこナシな感じで(笑)、ダメなところ満載なんですけど、彼なりの優しさだったり、「こういうところがあるから、泉は離れられずにいるのかな」というところがあるんですよ。それがヤツの魅力なんだと思うんですけど、なんで監督は僕にこれをやらせようと思ったのか、若干不安ではありましたね」
お二人とも少し不安があったようですね。でも作品を観てみると、まさにハマリ役といった感じでした。
■西川:「そうですか?! 泉はいいですよね。健気で、一途で。オレがハマリ役って言われたら…(笑)」
■井上:「でも私の衣装合わせの時に先に西川さんの写真が壁に貼ってあったんですけど、完全にヒモにしか見えなくて。もうその時点から「すごく合っていらっしゃるな」と思っていました(笑)」
井上さんから見た、西川さんの“ヒモらしさ”とは、どんなところだったんでしょうか?
■井上:「重ね着の衣装で白い長Tに紺のざっくりした服を着ていたんですけど、そのヨレ具合とかが、完全に“働いてない”、“いかにもオフ”って感じで、それがすごくヒモっぽくて。で、ちょっとかわいらしい一面もあって、泉も要所要所で心を掴まれるんですよね。絶妙のタイミングで出してくる表情とかに、「ああ、ぴったりだわ」と思ってました」
■西川:「今回はオールロケだったんですけど、大規模な作品ではないのでものすごくコンパクトに自然な感じでロケをしていたんです。で、二人だけのシーンを撮影しているのを見た人には「二人でデートをする番組の撮影かな?」と思われていたようで、あの衣装、僕の私服だと思われていたみたいなんです。「あれ、オレの私服じゃねーよ!」っていう(笑)。まぁでもそれも、隣のお兄さん的な……みんなの心の隣にいる、野に咲く花のようなイメージでいいかなと(笑)」
■井上:「野に咲く花のようにって、裸の大将ですか!(笑)」
■西川:「(笑)。でも二人でのロケがデート番組の撮影に見えたとしたら、それはすごく自然に見えたっていうことなのかなぁと思って。すごく良かったと思いますね」
ヒロミがラーメン屋で泉にチャーシューをあげるシーンや、メロンアイスを買ってくるシーンなど、いかにもヒモっぽい感じのシーンもすごく自然でした。普段から西川さんがああいうことをやっているのかと思ってしまうくらいに。西川さんとヒロミ、似ている部分はありますか?
■西川:「どうでしょうね……男性に対しても女性に対しても、相手が気持ちよくなってくれることが自分の中でプライオリティが高いので、そういう部分は似ているかもしれませんね。ちょっとしたことで相手が喜んでくれるのはすごく嬉しいです」
泉を演じられた井上さんのハマりっぷりも見事なものだったと思います。例えばシケモクを拾い集めるシーンの、不幸のどん底感と少しコミカルさを感じさせる雰囲気は、井上さんじゃないと出せなかったのではないかと思えました。
■井上:「シケモクを拾うシーンもそうなんですけど、「自然な生活の姿を切り取って映画にしているんだよ」っていう風になればいいなと思っていたので、もしハマっているように感じてもらえたなら嬉しいですね」
“自然さ”を出すために、何か特別なことはしましたか?
■井上:「演じているんだけど演じているように見えてはいけないので、だからこそ台本を読み込みました。「これは自分のことなんだよ」って錯覚が起きるくらい何度も何度も読んで、役を吸収していきましたね。“演じない”ってことが大事だったんだと思います。監督も「演じすぎない、自然な感じで」とおっしゃっていました。私はおしゃべりなので、普段は早口なんですよ。で、セリフを泉のテンポに合わせてゆっくり言おうとすると、棒読みのような感じになってしまって。でも監督は「それでいい」って言うんですね。それを聞いて「ああ、演じちゃいけないんだな」と思いました」
西川さんから見て、井上さんと泉に共通点はありましたか?
■西川:「二人はすごくイコールな印象ですね。井上さんは皆さんが思っている以上に気をつかうタイプで、それは素直に感心しました。大人の女性なんだけど、女の子のような純粋さも持っているし、それに男の人はやられちゃったりするんだろうなと思いましたね。その純粋さは泉と共通する部分だと思うし、やはり泉と同様に大人の女性らしく気をつかって一歩引くところもある。そんな井上さんが相手だからこそ、僕も集中して演技できました。初めての映画ですから、カットがかかった後、急に泉から井上さんに戻られたら、たぶんとまどったと思うんです。でもその変化がなだらかだったので、相手役の僕もヒロミであり続けることができて、やりやすかったです」
そういう状態が作れるということは、雰囲気のいい現場だったんでしょうね。
■西川:「そうですね。でも僕自身が不慣れですから、ご迷惑にならないように萎縮していて。もうホントにずっと萎縮していて、ご飯も食べられず、何も飲めず、ずっと台本を見て、誰とも話せず……現場では本当に孤独でした……」
■井上:「すごくいい話を、なんで最後は嘘で固めるんですか(笑)」
■西川:「いやもう、本当に井上さんや井上さんのスタッフの方とは目を合わせられなかったです(笑)」
■井上:「いやいや、私のマネージャーさんとペラペラ話してたじゃないですか(笑)。ご飯も思いっきり食べてましたし、全然元気よくしゃべってましたよ」
今作では鳥肌実さんと共演されていらっしゃいますが、現場での鳥肌さんはどんな雰囲気だったのでしょうか?
■西川:「実は僕、鳥肌さんにものすごくお会いしたかったんですよ。初めて生で鳥肌さんを見たときにはものすごくテンションが上がって、本人の前で「うわぁ本物だぁ」って言っちゃったくらいなんです。でも皆さんが思っていらっしゃる以上に穏やかな方で、すごく礼節をわきまえていらっしゃって、丁寧に挨拶をされて。でもお召しになられている服や移動に使われている車は明らかにおかしいんですよ。「なんですか? それ??」っていう。現場に珍しい衣装があるなと思ってスタッフに聞いてみると「あ、それ鳥肌さんの私物です」って言われて、「ええ! こんなの持ってるの?!」って(笑)」
■井上:「撮影の衣装も、鳥肌さんは全部私物で出てらっしゃるんですよ。撮影のオールアップの時には、記念写真をお願いしてしまいました。名刺ももらって、すごく嬉しかったです」
作品後半、泉とヒロミの状況が少し変化しますよね。特にヒロミはいろいろあって、不幸から解放されるチャンスを手にして、逆に葛藤を覚えていきます。お二人もアーティストや女優として成功を手にされていく中で、不幸ではないにしろ、状況が良くなっていくという場面は経験されていると思います。そういう時、状況が良くなることに対する葛藤を感じることはあるんでしょうか?
■西川:「そういうものはあるとは思いますね。たとえばヒロミは夢見ていたものがあったんだけどそれが実現できなくて、その反動から立ち直れずにいたんだじゃないかなと、演じるうちに思うようになったんです。元々ダメなんじゃなくて、一生懸命何かをやろうとしていたんじゃないかなって。それに対して自分は今、少なからず自分が目指していたものを生業にしていたりとか、こうして新しいことに挑戦させていただいて新しい出会いを得たりしていて、これは本当にラッキーなことだと思っています。だからこそ改めて、どんな状況においても気持ちは挑戦者でいたいですね。映画に出させていただくことは最初、相当躊躇したんですけど、やらないで外側から何か語るよりは、実際に自分でやってみて思ったことや感じたことを人に伝えたりしたいですし、そうしてできる作品やそこに至るプロセスを含めて、何か感じ取っていただけるようなことをやっていくことが、ある種、自分の使命のようなものだと思っています。だから一生もがき続ける、挑戦し続ける自分でありたいですね」
■井上:「私はグラビアから出て、バラエティをやり、今少しずつお芝居をやらせていただいている立場なので、全然女優だなんて言えないですよ。ただ上は目指したいですけど、それがどういうものなのかわからないですし、今目の前にあることを一生懸命やることだけを考えるようにしています。上を見ればきりがないし、それを見るといろいろネガティブなことを考えてしまいがちになりますからね」
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『コラソン de メロン』
配給:ジョリー・ロジャー
公開:2008年5月31日(土)
劇場情報:シアターN渋谷ほか全国にて公開
公式HP:http://www.cinemusica.jp/corazondemelon/
あらすじ
OLの泉は恋人のヒロミと同棲中。だがヒロミは病気を理由に仕事もせず、ヒモ同然の日々を送っていた。ある日、泉は会社からリストラを言い渡されてしまう。クビになったことをヒロミに言い出せず、就職活動に奔走する泉。そんな苦労は知らず、ヒロミは病気を理由に「高級メロンを食べたい」と言い出す。うまくいかない就職活動の中、なんとかメロンを手に入れようと躍起になるが……。
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人物紹介
井上和香井上和香
1980年、東京生まれ。02年秋にデビューするや瞬く間にブレイクし、49年には第41回ゴールデンアロー賞のグラフ賞を受賞。同時にテレビ、ラジオ、CMなど幅広いジャンルで活躍する。また04年には舞台「SAY YOU KIDS」に挑戦。その後「鬼嫁日記」他多くのドラマにも出演し、女優としても活動。
西川貴教西川貴教
1970年、滋賀県生まれ。96年「T.M.Revolution」として活動を開始。97年にシングル「WHITE BREATH」でオリコンチャート1位を達成、アルバム「triple joker」はダブルミリオンセラーを達成する。06年よりバンドプロジェクト「abingdon boys school」を本格始動。またラジオDJやミュージカルで主演を務めるなど幅広い分野で活躍している。

取材・文:井上真一郎