vol.27 映画『新聞記者』シム・ウンギョンさん×藤井道人監督

ーー映画を観た時の衝撃が今も残っています。
シム・ウンギョンさんは、出来上がった映画を最初に観た時、どんな感想を持たれましたか?

シム:やっと出来たなって思いました(笑)『新聞記者』というタイトルだけ見ると凄く難しくて“観なくてもいいかも”って思うかもしれないけど、藤井監督が色々な新しい感覚でアレンジしていて、サスペンス・エンタテインメントとしてもっと面白く楽しめるように作られたんじゃないかと思いました。

 ーー編集はもちろん、カメラワーク、陰影など斬新でした。

シム:そうですね。私も驚きました。

ーー監督はこの映画の企画を最初に聞いた時、どう思われたのですか?

藤井:最初は凄くプレッシャーでしたし、世代としてもそこまで新聞を取ってきた人間でもないし、選挙(政治)というものに凄く熱中して生きて来たわけでもない。僕は映画小僧だったので“なぜ、僕に?”って凄く思いましたし、最初は躊躇しましたね。ですが、河村プロデューサーに“そういう世代だから、この映画を撮る意味がある。この映画を託したい”という思いを聞いて受けました。後は、主演のお二人が素晴らしかったので楽しかったです。

ーー私は、シム・ウンギョンさんが日本映画に出演することを知り、最初、驚きました。

藤井:最初聞いた時“エ?”って思いますよね。僕も凄く興奮しました(笑)

ーーシム・ウンギョン自身も今回は、アメリカで育って日本で働いている女性新聞記者で日本語での演技になりますよね。難しかったのではないですか?

シム:難しかったです。内容もそうですが、キャラクターが使っている言葉自体が普段使っている言葉ではないので、それをまず勉強しました。発音やイントネーションのチェックを監督に相談しながら演じられたので助かりました。

藤井:凄いですよ。記者さんの言葉って、基本的に僕たちも普段使わないような言葉なんですよ。その中には、独特の動きもあったりして。シムさんがクランクイン前に東京新聞社さんに行って、色々な事をまず自分の身体の中に入れる時間を作っている姿を見て、横で僕自身が勉強していました。

ーー自分の役を演じる前にリサーチする上で新聞社に行って、記者の方々と直接お話をされて発見などありましたか?

シム:まず、新聞がどうやって出来るのかをちゃんと理解出来ました。新聞は毎日出るじゃないですか、いつもある物だと思っているんですけど一日の新聞が出来上がるのは、大変な作業なんだってことを記者さんたちの努力を凄く感じました。記者さんたちの姿を見て印象的だったのは姿勢なんです。皆、猫背だったんです。その姿を見て“なるほどなあ”って思って、キャラクター作りに取り入れたりしました。撮影の時に吉岡(シムさん演じる若手記者の名前)がデスクで仕事をやる時に猫背にしたり、記者って集中力が凄いと思うんです。その集中している姿をよく考えて演じました。

藤井:現場ではもちろん、編集作業をしていても思うんですよ。シム・ウンギョンさんの演技は、言葉というものがあるけれど、表情だけで全部の感情がわかるんです。カメラマンさんが必然的にドンドン寄りたくなる“もっと見たい、もっと見たい”って(笑)お芝居のアプローチも全然違うんだなって、レベルの違いというか、皆がモニターを見て表情だけで一発OKって。そこで面白かったのは“韓国の映画の作り方ってどうなんですか?”って聞いた時にドンドン色んな球を投げてくれるんですよ。シムさんが、感覚的に“これはどう?これはどう?”って色々な演技のプランを見せてくれるんです。その投げてくれる球がどれも100点過ぎて選べないって時もありました(笑)一個一個の動きに説得力があって編集していて楽しかったです。

ーーシム・ウンギョンさんはTVドラマ「ファン・ジニ」(06)や映画『サニー 永遠の仲間たち』(11)『怪しい彼女』(14)など多くの作品に出演されています。その全てが今までと違う新たな顔にさえ思える演技なのですが、ご自身が演じる上で大切にしている事はなんですか?

シム:お芝居は、いつも難しいです。私は子役から演技を始めたのですが、演技が楽しかったのは最初の頃だけで、その後は凄く難しいなって、いつも悩んでいます。その中でキャラクターが持っている真心を大切にしながら芝居をしています。

ーーシム・ウンギョンさんはご自身が演じた“吉岡エリカ”というキャラクターは、どんな女性だと思いますか?

シム:ある意味では冷静なんですけど、凄く情熱を持っていて誰よりも真実を届けたいと思っているキャラクターだと思っています。私が魅力的だと思ったのは、彼女が持っている主体性。主体性が集まったキャラクターだと思ったので彼女を演じたいと思いました。

ーーそれが表情に出ているのですね。観ている私たちも気になるっていう。
日本映画に出演してみて、特に韓国映画と違うと感じたところはどこですか?

シム:感情の出し方ですね。日本の映画は色的に言うと凄く薄いけど、深いメッセージが込められた映画がたくさんあると思います。あと現場の雰囲気もちょっと違いますね。クランクインの時に皆の前で“吉岡エリカ役のシム・ウンギョンさんです”って紹介されて拍手ってところが…最初ちょっと恥ずかしかったです(笑)今は少し慣れましたが、最初は恥ずかしくなると “現場が始まるので早く移動して下さい”とか“お疲れ様でした”とか冗談を言って逃げていました、ちょっと面白かったです。

ーー韓国ではないの?

シム:韓国は普通に“今日は初日です。よろしくお願いします”って感じで挨拶を交わして、ほぼすぐにリハや本番に入ったりします。

ーー色々と違うのですね。
藤井監督の作品は、最近だと青春の苦悩を描いた『青の帰り道』(18)や山田孝之さん、阿部進之介さんと企画から生み出した『デイアンドナイト』(19)で、本作の『新聞記者』は、相当のチャレンジだったのではないですか?

藤井:ここ数年変わって来て感じたのは、大変な映画の方が好きだということですね。やっぱりハードルは高い方が越えがいがあるし、『新聞記者』も自分が普通に生きて来たら出会わなかった環境だけど、これだけ素敵な環境に恵まれたからボロボロになるまで、これで死んでも悔いがないって思うくらい思い切ってやるって事はどの作品でも変わらないので、そういう作品と撮り続けていけたらいいなって思います。

ーー今後も作品を楽しみにしています。さてシム・ウンギョンさんは日本映画が好きと伺いましたが。

シム:好きな日本映画が、たくさんあるので難しいですね(笑)私が最初に日本映画を観てショックを受けた作品は『リリイ・シュシュのすべて』(05)と『誰も知らない』(04)です。中学生の時に初めて観て、凄くカルチャーショックを受けたんです。“私もいつか日本で仕事が出来たら、嬉しいな”と思ったきっかけの作品になりました。この二つの映画にもらった影響がたくさんあるので、今でも知り合いにおすすめしています。

ーー最後に藤井監督から映画公開を楽しみにされている皆さんへ向けてメッセージをお願いします。

藤井:『新聞記者』、たくさんの方に観て頂きたいです。もしかしたら“難しい題材かな?”って思われる方もいると思いますが、大きく人間の話を撮っています。集団と個人、組織と1人、そういう中で自分がどう向き合うか?人間の根底の部分をしっかり描いたつもりです。たくさんの方に是非観て頂きたいと思っております。よろしくお願いいたします。

作品情報

新聞記者

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  • 公開日
  • 2019年6月28日より
  • 劇場
  • 全国にて
  • 配給
  • スターサンズ、イオンエンターテイメント
  • 公式HP
  • http://shimbunkisha.jp/
(C) 2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

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伊藤さとり(いとう さとり)

映画パーソナリティ。邦画&洋画の記者会見や舞台挨拶を週5回は担当する映画MCであり、年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。
TSUTAYA店内放送「WAVE-C3」で新作DVD紹介のDJ、ケーブルテレビ無料放送チャンネル×ぴあ映画生活×Youtube:動画番組(俳優と対談)「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、雑誌「シネマスクエア」コラム、スターチャンネルで映画紹介他、TV、ラジオ、雑誌、WEBなどで映画紹介のレギュラーを持つ。心理カウンセリングも学んだことから映画で恋愛心理分析や恋愛心理テストも作成。

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