vol.2 映画「海を駆ける」監督:深田晃司&映画「モリのいる場所」監督:沖田修一インタビュー

映画「海を駆ける」監督:深田晃司&映画「モリのいる場所」監督:沖田修一インタビュー

映画「海を駆ける」監督:深田晃司(右)/映画「モリのいる場所」監督:沖田修一(中央)

インタビュアー:伊藤さとり

 

ーーお二人が今回監督した作品は、両方ともオリジナル作品ですね。

深田:そうですね。よくこの企画が通ったと思いましたね(笑)

 

ーーお二人は、いつ頃知り合ったのですか?

深田:随分前ですよね。共通の友人が俳優の古舘寛治さんで、その縁で知り合いました。

沖田:僕は青年団(劇団)関係の俳優さんと知り合いで、深田さんは青年団にいたので(笑)

深田:自分は青年団の演出部に2005年に入ったんですけど、映画を青年団の俳優で作りたいなって思っていて(笑)先輩であった古舘さんが出演した沖田監督の作品『このすばらしきせかい』も見て、沖田さんて面白いなって思っていたんです。

沖田:深田さんには、深夜ドラマ「ノーコンキッド」に出演してもらいました(笑)ちょこちょこと会っていますよね。

 

ーーお互いの新作『海を駆ける』と『モリのいる場所』を観られたそうですが、感想を教えて下さい。

沖田:試写室が同じで『海を駆ける』のポスターが貼ってあって(笑)結構、周りから話は聞いていたんです。カメラマンの芦澤明子さんは、僕の作品も撮影してもらっているのですが、僕の映画の時とは随分と雰囲気が違っていて。監督が違えば、違うんだなって思った。

深田:芦澤さんが撮影したのは『南極料理人』と『滝を見にいく』。あと芦澤さんと沖田さんの話をする時に、芦澤さんの口からよく出てくるのがドラマ「青梅街道精進旅行」あれは、めちゃくちゃ面白いのよって聞いています。

 

ーー同じカメラマンさんでも映像の違いを感じたとの事ですが、その他には?

沖田:よく撮ったなって、思いましたよ(笑)面白いなって思ったのは、ディーン・フジオカさんに能力があるにもかかわらず、話が別個に進んでいくところ(笑)

深田:そこがミソなんですよ。

沖田:深田さんは、色々と考えてそうなっているんだろうなって思うんですよ。深田さんの理屈があって、この話が出来ているんだろうなって。でも、それを理解する想像までは出来なくって(笑)何で、この超能力の部分で話が進まないのかって、そこが面白かった(笑)そもそも、どういう企画だったの?

深田: 2011年に津波に関するシンポジウムでこの場所(バンダ・アチェ)に行く機会があって、「この場所で映画を作りたいなあ」って思ったのが始まり。その後、映画『ほとりの朔子』という作品を撮って、その時の鶴田真由さんの役がインドネシアの研究者っていう設定なんです。そこから、今回のヒロインであるサチコがインドネシアに行く話を作ろうって思ったんです。

海を駆ける

ーー映画『ほとりの朔子』とちょっと繋がっている作品なんですね。

深田:ちょっとパラレルになっていますね。だから、鶴田さんも太賀君にも、続けて出演してもらっているんです。そこから、最初に記憶喪失の謎の男が現れるみたいな設定を思いついたんですけど。その中でやりたかった事は、「自然」が服を着て散歩に来ちゃったみたいな感じ(笑)自分では自然とは何か?を考えて、私たちに関係あるんだけど、人間の理屈や価値観、倫理観とは関係なく存在していて、気まぐれに良い事も悪い事もする存在として描きたかった。そうしたら絡みようがなくなって(笑)下手に絡めるとサチコと恋愛関係があるんじゃないか?とか色んな所に繋がっていってしまうから。なんか、植物みたいにそこに「居る」だけにしようって思ったんです。

沖田:そういうことか!だから周りの人も「自然が服を着て歩いている」って意識で、あの能力に関しても無関心っていうか?気にしていないんですね?

 

ーー完全にお客さんに対して「考えろ」って言う作りが、発想力が凄いですね。

深田:(笑)そうそう、インドネシアには「レインストッパー」っていう職業があるんです。いわゆる日本でいうところの祈祷師なんですが、インドネシア側では、映画撮影では依頼するのは当たり前の事だったのでお願いしたんです。

沖田:日本では、映画の撮影前に神社でお祓いしますよね。それと同じ事ですかね。

 

ーーでは深田監督、沖田監督の『モリのいる場所』を観た感想を教えて下さい。

深田:これこそ、よく企画が通ったなって思いましたよ(笑)面白かったです。本当にただ庭を歩いているだけで、長編映画が作れるって凄いなって。

 

ーー凄いですよね、それにCGを使ってないんですよね。

沖田:CG使ってないです!3か所くらいから蝶を数匹飛ばすとかして、撮影するの大変だったんです(笑)

深田:虫待ちとかあったんじゃないですか?

沖田:ありましたね。でも、尺取虫はいい芝居してくれました(笑)山崎努さんや樹木希林さんを差し置いて、庭とか虫とかが主人公みたいな感じがいいなって思ったんです。撮影中は、生き物と同じような同類のような感覚で、山崎さんを見ていたかも(笑)今回のディーン・フジオカさんの役の雰囲気も同じような感じかもしれないですね、表情が削られていくっていうか。

深田:そうですね、近いかもしれないですね。

 

ーー作品を企画する上でのポイントはなんですか?

沖田:山崎努さんを撮りたかったんです。『キツツキと雨』の撮影時に山崎さんから画家・熊谷守一さんの話を聞いたんです。たまたまロケ地が出生地の近くで、山崎さんから「記念館に行ってみたら」と声をかけてもらって。それから自分なりに調べて、山崎さんが演じて下さるかわからない状態でしたが「山崎さんの“熊谷守一”」を想像しながら脚本を書いたんです。

深田:山崎さん、素晴らしかったですね。歩き方を含め、熊谷守一さんをリサーチして演じられているんですか?

沖田:晩年の熊谷守一を撮影した写真集とかあって、そこに暮らしぶりとか色々と書いてあって。それを参考にしました。

深田:食事のシーンとか面白いですよね。毎回、上手いなって思うんですよ。実際はどうだったかわかりませんが、奥さんがまったく手伝わない感じとか(笑)

モリのいる場所

ーーお二人ともオリジナル作品ですが、脚本を書く上で重点にしている部分はどこですか?

深田:まずラストシーンでこれが撮りたいっていうのが見えたら「いける!」って思いますね。多分、脚本教室とかでは、ダメな書き方ですね(笑)ラストシーンが終わった時に、余韻が残るようにしたいんです。『海を駆ける』の場合、まず記憶喪失の男ラウが海から現れるところからスタートしようって事になって。

沖田:深田さんが言っている事よくわかります。最後のシーンでこうゆうのが待っているって言うのが書いている途中からあって、それに向かって逆算していくっていう発想がありますね。それってダメな書き方だったんですね(笑)

深田:それだと計算が見えちゃうっていうか(笑)キャラクターに任せて、キャラクターが動くようにみたいな事を言われるんだけど、でもしょうがないなって(笑)

沖田:場所とか人、テーマから入る事もありますよね。色々な入り方があります。でも、
深田さんの映画ってどこから入っているのかわからない印象がありますよね。『淵に立つ』とか、どういう発想からストーリーが生まれたんですか?

深田:『淵に立つ』に関していうと、描きたかったのは「暴力」なんです。「暴力」を暴力描写を一切出さずに全体で描きたいって。「交通事故」や「病気」「自然災害」も暴力だと思うんですよ。良い事をしたから「暴力」が来なくって、悪い事をしたら「暴力」が来るって話ではないじゃないですか、関係なく突然来るものですから。

沖田:やっぱりテーマがあって、それに伴うラストシーンがあるって感じですかね。

深田:テーマなのかな(笑)自分は、モチーフって言い方が好きなんです。「暴力」というモチーフを描きたいってところからスタートして、テーマは観てくれた人が考えればいいかな。自分の中のある種の理想ってあるじゃないですか(笑)それでいうと、画家って凄いなって思うんですよ。花と花瓶があって、それを描けば一つの作品になる。作品として成立するし、世界観もある、でもそこにあるのは花と花瓶だけである。それに近い事を映画でもどこかでやりたいって気があります。

沖田:僕は、それをこの映画でやろうとしていて。小さな小さな、ただそこに居るだけのある夏の1日の話を、シンプルにシンプルに撮ろうと思った。

 

ーー映画『滝を見に行く』は、なぜ撮影しようと思ったのですか?

沖田:プロデューサーの深田さんからワークショップ映画を撮影しないかっていうお誘いがあって、自分のアイデアの引出しの中に「3人の女性がひたすら愚痴を言いながらハイキングして、最後に凄い綺麗な滝を見る」っていう話を考えていて、それをワークショップでやったら面白いかなって(笑)

映画「海を駆ける」監督:深田晃司&映画「モリのいる場所」監督:沖田修一インタビュー

ーー作品には、お二方それぞれの個性が光ってますよね。

深田:沖田さんは『南極料理人』や『横道世之介』など原作ものも色々と撮影しているのに、沖田さんカラーが出てますよね。やっぱり、沖田さんの作品だって思います。

沖田:原作があっても、そうなればいいなって毎回思っているんです。昔、プロデューサーの佐々木史朗さん(オフィス・シロウズ)が「原作ものをやっても、結局は自分のものになるから、怖がらずにやりなさい」って言われて。

 

ーーオリジナルものを映画化するのは、すごく難しいですよね。

深田:主に資金面ですね(笑)

 

ーー今後、どんな作品を撮っていきたいですか?

沖田:今やっている事をコツコツと続けられていけたらいいですね。

深田:自分は、相当恵まれている立場にいると思うんです。作りたいものを作れて。沖田さんもそうですよね。

沖田:最近、気付きました(笑)

深田:正直、沖田さんが『南極料理人』を撮影した時、いきなり凄いところに行ったなって思って(笑)シンデレラストーリーじゃん(笑)ジャパニーズ・ドリームを目の当たりにしましたね。

 

ーーオリジナル作品が撮れる監督と撮れない監督、何が違うんですかね。

沖田:本当にやろうと思ったら、志ひとつでやれますから。やろうとするか、しないかの違いですよ。

深田:毎年撮っているような誤解があるのですが、大体一本一本のお金集めに3年〜4年かけているんです。その為に、合作をやっているところもあるし(笑)

沖田:深田さんは、そうゆう部分で他の監督さんと目線が違うところがあるよね。

深田:それは多分、青年団で芸術をやるには色々とお金の事をわからないといけないって言われたから(笑)

沖田:作品が撮りたいのにお金が集まらなくって、縮こまる事とかないの?

深田:基本的には、自分がやりたい事が出来るように予算を膨らませていく。そこを目標にしていますね。

沖田:どこで折り合いをつけていくの?

深田:折り合いはつけますよ、プロデューサーがいるので(笑)

 

ーー沖田監督の場合は、企画を沢山提出するのですか?

沖田:最近まで、自分がどうやってお金を使っているのか全く知らなかったんですよ(笑)プロデューサーサイドが、監督にそこまで考えさせるの良くないって感じだったみたいで。ちょっとずつ勉強しています(笑)一個一個ちゃんとやりながら、最近は同時進行で色々な企画を出しながら、どれかが形になっていく感じですね。それでスケジュールを組んでいくと3年先まで忙しい感じになっちゃって(笑)

深田:自分は今、そうなってますね(笑)どうせ、いくつかぽしゃるって気持ちで出していたら、意外とスムーズに通って(笑)

沖田:そうゆうもんなんだね。

 

インタビュー日:2018年5月7日(月)

 

 

『モリのいる場所』
公開日:2018年5月19日(土)より
劇場:シネスイッチ銀座、ユーロスペース、シネ・リーブル池袋、イオンシネマほか全国にて
配給:日活
公式HP:http://mori-movie.com/
(C) 2017「モリのいる場所」製作委員会
https://cinema.co.jp/title/detail?id=82536

モリのいる場所

『海を駆ける』
公開日:2018年5月26日(土)
劇場:全国にて
配給:東京テアトル
公式HP:http://umikake.jp/
(C) 2018「海を駆ける」製作委員会
https://cinema.co.jp/title/detail?id=81165

海を駆ける

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伊藤さとり(いとう さとり)

映画パーソナリティ。邦画&洋画の記者会見や舞台挨拶を週5回は担当する映画MCであり、年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。
TSUTAYA店内放送「WAVE-C3」で新作DVD紹介のDJ、ケーブルテレビ無料放送チャンネル×ぴあ映画生活×Youtube:動画番組(俳優と対談)「新・伊藤さとりと映画な仲間たち」、雑誌「シネマスクエア」コラム、スターチャンネルで映画紹介他、TV、ラジオ、雑誌、WEBなどで映画紹介のレギュラーを持つ。心理カウンセリングも学んだことから映画で恋愛心理分析や恋愛心理テストも作成。

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