vol.44『ルームロンダリング』池田エライザさん インタビュー

ホラーからコメディ

映画はなるべく予備知識なく先入観なく観るのが好き。

シネマコラムvol.10『ローズ秘密の頁』でその理由はチラッと書きました。

今回の『ルームロンダリング』は何も知らずに観てよかったなという作品。

なので、映画をまだ観ておらず、これを読んでしまっている方は鑑賞後に改めて訪れていただきたい気持ちもあります(笑)。

『ルームロンダリング』は、TSUTAYAが新たなクリエイターの発掘を目指して映画企画を募集するコンテスト「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM FILM2015」(TCP)で、『嘘を愛する女』に次ぐ準グランプリに選ばれたオリジナル作品。

そもそも、“ルームロンダリング”とは何か?マネーロンダリングはよく聞きますが…。

★ルームロンダリングとは

【何も知らない新しい入居者へ事故や事件などが起きた“ワケあり事故物件”を紹介する前に、事故の履歴を帳消し、クリーンな空き部屋へと浄化するという都市伝説的な秘密のお仕事?!】

この“事故物件”を題材に、今回初めて長編映画のメガホンをとった片桐健滋監督。

中村義洋監督の「残穢 -住んではいけない部屋 -」で助監督をしていた時に、事故物件をテーマにしたコメディを撮りたいと思ったそう。

なぜ、あの「残穢・・・」からコメディを撮りたいと?(笑)。その発想がTCPでの準グランプリに繋がるのでしょうね。

主人公・御子がルームロンダリングの仕事を通じて、“事故物件”で幽霊たちと出会うのですが、こんなにも幽霊たちを愛しく思えてしまう作品はかつてあったかしら。

幽霊がみえてしまう、自分の殻に閉じこもりがちなこじらせ女子・御子を演じた池田エライザさんにインタビュー。 文学少女の一面もあるエライザさんの言葉にも注目!

エライザさんの頭の中

ーー予備知識なく観させてもらったのですが、最後かなり泣きました。

エライザさん:私も泣きました。撮影中も、出来上がった作品を観た時も。

ーーこの作品にはかなり思い入れがあるのでしょうか?

エライザさん:これまでの作品、どれも思い入れはあるんですけど、この『ルームロンダリング』は携わっているスタッフの方たちがこの作品にかけている愛情だったりとか、思いを寄せている長さとか、『ルームロンダリング』という小さな惑星があるような感覚になれるというか。とてもクリエイティブに時間を使っている、そんな現場でした。

ーーエライザさんはよく本を読まれるということで、とても語彙力がありますね。

エライザさん:いやいやいや全然!いつも何言ってるのかわからなくなっちゃうんです。

ーー今回演じた御子ちゃんも本をよく読んでいますが、エライザさんが本を読むことで演技の役にたっているなと思うことはありますか?

エライザさん:後付けですけどね。長い目で見て、人間性を育てたいという意味で色んな本を小さい時から読んでいたんですけど。本もある種の疑似体験なので、例えば自分には当たり前にいる父親と母親、それが御子ちゃんからなくなってしまった場合に彼女は何に反応するのかなとか、時の流れの中でどのくらい気持ちを風化させることができるのかとか、そういうことを本から学ぶというか参考資料のような感じですね。

ーーでは、本を読んでいることで役に結び付けやすい?

エライザさん:そうですね。あれもこれもでは良くないんですけど、取捨選択して、その選択の余地がたくさんあればあるほど、あそこからこれをいただいて、というように厚みを出すことができるので本には常に助けられています。

ーー片桐監督の長編映画初監督作品ですが、脚本を読んだ時の感想は?

エライザさん:この台本を主演でいただいて、嫌っていう人はいないって、そう思えるくらい本当に近年稀にみる愛しいと思わせてくれる作品でした。予告を見ると幽霊とのコミカルなやりとりがこの話の醍醐味のように見えるんですけど、家族との不器用なやりとりというのが御子ちゃんとしての醍醐味だと思っていて、監督自身も「母をたずねて三千里」のような作品をつくりたいとおっしゃっていて、私も台本をいただいたときは、御子ちゃんが母親とはじめて心を向き合わせる作品なのかなって。これは絶対やり抜きたいなって思いました。

ーー大阪での舞台挨拶では、一か月くらいなら幽霊と暮らしてもいいとおっしゃっていましたね。

エライザさん:何であんなこと言ったんだろう(笑)。でもそんな気持ちにさせてくれる映画だったというか、夏場、お化けは怖いという扱い方をするけど、『ルームロンダリング』をやってみると、お化けも同じようにこの地球に生きていた人間で、その人たちに対して怖いと言うことが少し失礼のような気がしてくるくらい、皆さんハートフルに演じていらっしゃったので、そこの価値観はすごく変わりました。

ーー今回、御子の叔父・悟郎さんを演じたオダギリジョーさんとの初共演はいかがでしたか

エライザ:御子ちゃんが内弁慶でいられるような、甘えていられる懐の広さというか、環境を作ってくださって、かなり支えられていました。『ルームロンダリング』の現場がより深みを増していくようなそんな存在でした。


ーー悟郎さんのシーンで、(御子が肌身離さず持っている)アヒルのジョセフィーヌに包帯を巻いてあげるシーンがすごく好きです。

エライザさん:包帯にリボンもつけて。御子のものであり、悟郎さんの姉である御子のお母さんがお父さんと一緒に誕生日にくれたものなので、ここは適当には扱えないという、そんな“家族好きじゃん!”という悟郎さんが垣間見えるシーンは、この『ルームロンダリング』という映画が子供にも見てもらえる愛しい作品になった瞬間だと思います。

ーー悟郎さんの愛情を感じました。

エライザさん:私も悟郎さんが「みんなお前が一番なんだよ」というところが、悟郎おじさんとしてじゃなくて、御子のお母さんとの姉弟関係も見える瞬間のようで、そこはすごく愛しいですね。

ーーご自分でも作品を作りたいと思っているそうですが、この『ルームロンダリング』からヒントを得た部分はありますか?

エライザさん:昔って休みの日や空いた時間、夏は涼みに行こう、という感覚で映画というカルチャーを楽しんでいる感じだったと思うんですけど、最近はエンタメにお金を出すというか、笑えるからとか、好きな役者が出てるから、という“~だから映画を見に行く”というのが最近の文化なのかなと思っていて、でもそれって寂しいじゃないですか。『ルームロンダリング』は、もっと気軽に、たまたま出会って、何かポスターが可愛いなとか、ちょうどこの時間にやっていたからとか、そういう理由でもぜひ巡り合って欲しい。ふと見て何だかいい気持ちになって、あ、そういえばお墓参りに行ってなかったなとか、そういうことを考えながら観てくれたら良いなと思います。自分ももし作品を考えるときは、わざわざ人を傷つけたり、わざわざ大きな話を書こうとするのは捨てようと思いました。もしかしたら地球のどこかで御子ちゃんっていう子がいるかもしれないねって、今も物件を浄化してみんなが何も知らずに生きていけるようにバイトしてるかもしれないっていう、ささやかな話を書きたいなって思いました。撮影中も空き時間にロケバスの中で短編を書いたりしていました。

ーーその短編は発表は?

エライザさん:いえいえ。もっと年齢を重ねてから50篇くらい上下巻で出したいと思っているので。

ーーでは、いまは色々な役を演じながら書き留めている?

エライザさん:そうですね、ある種人格が毎回違うような中で書くと、例えばもっともっとエンタメな映画に出ると、モリモリなエンタメなお話ができますし、それぞれ面白いです。

インタビューは向かい合って1対1で20分間。

時間がもっとあったら!もっともっと掘り下げて、もっともっと池田エライザさんの頭の中を覗きたかったです。

きっと日々の色々な出来事をちょっと違った視点でストックしているのではないかなと思いました。

『ルームロンダリング』に “何となく巡り合ってほしい”というエライザさんの言葉が、冒頭でお話した“予備知識なしで観て欲しい”という私の思いと共通するようで嬉しかったです。

御子ちゃんが殻をコツコツと少しずつ破っていく様を見守って、あふれる愛を受け取って、劇場を後にしてください!

 

『ルームロンダリング』
公開日:2018年7月7日(土)
劇場:全国にて
配給:ファントム・フィルム
公式サイト:http://roomlaundering.com/
(C) 2018「ルームロンダリング」製作委員会

▼作品ページ
https://cinema.co.jp/title/detail?id=81912

神取恭子(かんどり きょうこ)

フリーアナウンサー、椙山女学園大学非常勤講師。愛知県西尾市出身、1977年生まれ。
現在は名古屋テレビ放送の情報番組「デルサタ」、音楽番組「BOMBER-E」にレギュラー出演。
2002年から名古屋テレビ放送(メ〜テレ)の局アナウンサーを勤め、番組「ドデスカ!」や「昼まで待てない!」などで映画監督、俳優、ハリウッドスター500人以上にインタビューを行い、舞台挨拶の経験も豊富。
他にも、報道現場でのリポートやスポーツ番組のリポーターを勤めた。
ANNアナウンサー賞 ナレーション部門受賞。
趣味は映画鑑賞(年間200本以上)、お肉を食べること(お肉検定1級)、プロレス観戦。

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