vol.38『四月の永い夢』 中川龍太郎監督ティーチイン&インタビュー

四月の永い夢

「W受賞!」

全国で順次公開している『四月の永い夢』。 

中川龍太郎監督は現在28歳。 

17歳の時に詩集を出版し、大学在学中に映画制作を始め、2012年、自主制作映画「Calling」がボストン国際映画祭にて最優秀撮影賞を受賞。 

「愛の小さな歴史」が2014年東京国際映画祭にて公式上映。「走れ、絶望に追いつかれない速さで」も翌年出品され、最年少で2年連続の出品を果たす。 

今作『四月の永い夢』は、第39回モスクワ国際映画祭コンペティション部門に正式出品。国際映画批評家連盟賞、ロシア映画批評家連盟特別表彰をダブル受賞。 

 

中川監督のプロフィールを拝見して、ものすごく気になりました。一般的な人の階段の上り方よりも、かなりハイペースで駆け上がっているように思うし、どんな感性をお持ちの方なのか会って確かめなくては!ということで、 

名古屋・伏見ミリオン座で行われた監督ティーチインと個別インタビューに行ってきました! 

 四月の永い夢

「山口百恵さん似?」

3年前に恋人を亡くした、27歳の滝本初海(麻倉あき)。音楽教師を辞めたままの穏やかな日常は、亡くなった彼からの手紙をきっかけに動き出す。 

元教え子との遭遇、染物工場で働く青年・志熊(三浦貴大)からの思いがけない告白。 

そして心の奥の小さな秘密。喪失感から緩やかに解放されていく初海の日々が紡がれる…。 

 

まずは、お客様から監督に直接質問できる、ティーチインの様子から。 

お客様①:日常の中で感激した、こんなにいいことがあったということを教えてください。 

中川監督:面白いですね。今までさんざん色んなところを回ってきましたが、先ほどの一回目のティーチインもそうですが、名古屋の方、初めての質問が多いですね。 

僕は空いた時間はラジオを聴きながら散歩をして銭湯に行くという、そういう生活が非常に好きなんですけど、しょうもないことを言ってしまいますが、ちょっと前に行った銭湯で“冷凍サウナ”というものがあって、マグロを入れるみたいな縦の箱に入ってですね、シャーっとマイナスの冷気が出るんですよ。そのあとにお風呂に入るっていうね。新鮮な喜びがありましたね。 

お客様②:前作「走れ…」は親友が亡くなった話、今回は彼が亡くなった話。監督の中でそういうものを描きたいという思いがあるのですか? 

中川監督:そうですね。「走れ…」は、僕の親友が5年前に亡くなったんですが、その次の年に撮った映画ですので、自分の生傷のままの心みたいなものをそのまま映画に残しておきたいという気持ちがあったので、メモワールのような回顧録のような自分とすごく距離が近い作品でした。今回の『四月の永い夢』は、その友人が亡くなったという問題から3年という時間が経って距離を置いたときに、どういう風に描けるかと考えて、自分とは違う性別だったり立場のところからもう一度見直してみようということで違う設定にしました。これからは“どうやって生きていくのか”という現実的なアクチュアルなところに踏み出すべきだなと思っているので、新しい作風に変えていきたいと思っています。 

四月の永い夢

お客様③:配役はどのように決められたのですか? 

中川監督:前の作品もそうですが、当て書きであることが多くて、オーディションはあまりしていないので、皆さんだいたいイメージがある中で決めています。決める時のポイントが明確にあるわけではないんですけど、この作品でいえば、麻倉さんは「かぐや姫の物語」を観て声に惹かれたので、彼女の声とうまいハーモニーを鳴らす人を選んだというのがこの作品のキャスティングでは大きかったです。 

あとは、面倒な人は使わないですね(笑)。現場に来なくなっちゃう人とか、あんまり怒る人とか(笑)。僕は気が小さいものですから。なるべく優しそうな人(笑)。 

お客様④:高橋惠子さん演じる亡き恋人の母親が初海にいう“人生とは…”というセリフは監督の人生観からきたものですか?(どんなセリフなのかは作品をご覧くださいませ。) 

中川監督:自分自身まだ28歳いう年齢ですので、彼女に共感して作っている部分があります。あのセリフが自分の実体験からきた自分の言葉だと自分が自分に説教しているみたいな気がして、それだと成立しないなと思ったので、実は元ネタがあります。押井守監督と「バードマン あるいは…」のアレサンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が言っていた言葉にインスパイアされて作ったセリフです。初海もその言葉で救われるんじゃなくて、その言葉をいつかわかる大人になるっていう、頭の片隅に置くような言葉になればいいなと思ってあのセリフを作りました。 

お客様⑤:三浦貴大さんはいかがでしたか? 

中川監督:いい質問!意外と山口百恵さんとの方が似ている気がしました。人としては超最高の人です!僕がいままで一緒にお仕事した役者さんの中で、一番やりやすい、本当に気さくな方です。ただあまりに盛り上がりすぎてロケバスの中で、麻倉さんは静かに気持ちをつくりたいタイプだと思うんですけど、後ろで僕と三浦さんはバカな男子校みたいな会話をずっとしていたので、多分麻倉さんは嫌だったと思います(笑)。 

他にも、監督とお客様の生の会話ならではの面白い部分がたくさんありました。監督と撮影監督の違いは何ですか?という質問など、私もとても勉強になるティーチインでした。 

四月の永い夢

「滝本初海は志熊藤子だった」

――登場人物を当て書きをする理由は? 

中川監督:これは自分の技量の足りなさもあるかもしれないんですが、まったく知らないところから人間を想像するよりは、ある人を想定してその中で味付けしていく方が自分としては馴染みのあるやり方であるというのが一つ。あと、役者さんと話し合いながら作ったりすることがあるので。 

例えば、今回は麻倉さんが普段使いされている言葉を作品に取り入れたりとか、前の作品ですと太賀とストーリーの部分も一緒に考えたりとか。当て書きすることで密なコミュニケーションがとれる気がしています。 

――声でキャストを選んだのはこの作品だったから? 

中川監督:僕も声フェチなのですが、声で明確に選んだのはこの作品が初めてです。三浦さんと志賀廣太郎さん(亡き恋人の父親)の声って深くてコクがある低い声。この話は女性たちの話なので男性の声があまりキャンキャン主張したり、パンパン早く喋るよりは、音楽でいうと通奏低音みたいになるイメージにしたかったので。あと森次晃嗣さん(蕎麦屋の店主)もそうですね。それに対して、他の女性キャストは麻倉さんの声にどういう風に交じり合うかを意識していて、川崎ゆり子さん(初海の元教え子)は実は麻倉さんと同い年なんですけど、映画では8歳も年下という設定なのですが、声とか話し方で差が出るので、そういったところを意識して作りました。 

媚びてない声が好きなんです。凛としているというか。麻倉さんの声もそうですよね。媚がない声ですよね。 

――監督は詩人でもいらっしゃるので言葉でこだわったことは? 

中川監督:自分の詩的な言葉をバンバン入れる作品ではないなと思っていたので、麻倉さんのセリフに関しては特に麻倉さんの普段使っていいる言葉をそのまま入れようと思っていて。具体的に申しますと、(亡き恋人の実家で)お風呂を出た後に「いただきました。」というセリフは麻倉さんのアドリブだったと思うんですよね。あと「志熊さんは不思議な人だ」というセリフは、別のところで麻倉さんが「○○さんは不思議な人だ」と言っていたのを聞いてそれを取り入れたり。麻倉さんの普段使っている言葉を自分の中で詩的だなと思ったり、いいタイミングで使えそうだなというものを取り入れました。 

四月の永い夢

――三浦さんが演じた「志熊藤太郎」って不思議な名前ですが? 

中川監督:もともとは「志熊藤子の休日」っていう題名だったんです、この作品。“志熊藤子”というゴツい名前をコンプレックスに思っていた女の子が “その名前好きだよ” と亡くなった彼に言われていた。最初のバージョンではそういう題名だったんです。志熊藤太郎はそれの名残です。だから名前を名乗り合う場面は最初のコンセプトの生き残った部分です。名乗り合うっていう文化ってあまり残っていないと思うんですけど、相手の一番の人格のスタートである名前(フルネーム)というものについて、男女が出会うときに話すっていうのはやってみたいシーンとしてあったんですよね。 

新しい価値観とか好きじゃないものがいっぱいあますよ。古い価値観の中でも良いもの悪いものあると思いますけど、素敵なものもありますし。映画ってそれがなくなっても映像そのものは残るから、未来に残すタイムカプセルみたいな面があると思うんですよね。ですから、古い価値観だったり、やりとりみたいなものは映像に残していきたいなというのは撮り続ける以上はずっと思っています。 

――監督ご自身は現在28歳で「若い」と言われるのは嬉しいのか、いかがですか? 

中川監督:面白い質問ですね。自分で嬉しいとは思わないですね。ただ、責任はあるなと思っていて、是枝監督のようにすでに地位を確立された監督がこれからも偉大な作品を作るだろうけど、そういう方たちに頼っていたのでは意味がいないと思うし、自分たちみたいな若い人間が是枝さんとかに負けないように、“大丈夫です”と言えるぐらいの立場になるべく早くなりたいなという気持ちはあります。対抗心だってあるし、是枝さんが賞をとられてどこに行ってもその話がでるけれど、僕はそんなに気持ちよくその話を聞いているだけではいけないと思っています。もちろん嬉しいことなんですけど、皆さんと一緒にそうだそうだと言っているだけでは若い監督はダメだと思います。 

四月の永い夢今回、中川監督の様々なシーンへのこだわり、またパーソナルな部分もじっくり伺えてとても面白かったです。映画「カサブランカ」やジャズを取り入れた理由なども興味深かったですし、次回作のテーマも気になります。(全部書けなくて申し訳ないです。) 

このコラムを書かせてもらうようになって、オリジナル脚本で映画を撮っている監督さんにお話を伺う機会が増えました。才能あふれる皆さんの頭の中をのぞき見させてもらって、クリエイティブのクの字も見当たらない私の脳みそもちょっとは活性化されているといいのですが…。 

 

『四月の永い夢』
公開日:2018年5月12日より
劇場:新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開
配給:ギャガ・プラス
公式HP:http://tokyonewcinema.com/works/summer-blooms/
(c)WIT STUDIO / Tokyo New Cinema

▼作品ページ

http://cinema.co.jp/title/detail?id=82301 

四月の永い夢

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神取恭子(かんどり きょうこ)

フリーアナウンサー、椙山女学園大学非常勤講師。愛知県西尾市出身、1977年生まれ。
現在は名古屋テレビ放送の情報番組「デルサタ」、音楽番組「BOMBER-E」にレギュラー出演。
2002年から名古屋テレビ放送(メ〜テレ)の局アナウンサーを勤め、番組「ドデスカ!」や「昼まで待てない!」などで映画監督、俳優、ハリウッドスター500人以上にインタビューを行い、舞台挨拶の経験も豊富。
他にも、報道現場でのリポートやスポーツ番組のリポーターを勤めた。
ANNアナウンサー賞 ナレーション部門受賞。
趣味は映画鑑賞(年間200本以上)、お肉を食べること(お肉検定1級)、プロレス観戦。

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