vol.37『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』李闘士男監督インタビュー

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

「李監督ワールド」

「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。どういうことなのでしょうか?」

“Yahoo!知恵袋”に投稿された質問が話題となり、ボーカロイド曲、コミックエッセイ化され、

ついに実写映画になりました。

監督は「デトロイト・メタル・シティ」、「神様はバリにいる」を手がけた李闘士男監督。

脚本はドラマ「コウノドリ」シリーズなどで知られる坪田文さん。

原作の妻の性格や言葉を大事にしつつ、結婚3年目の夫婦が互いを見つめ直すという、オリジナリティあふれるストーリーを作り上げた。

前半のコメディ要素から後半にむけてグッと深みが増す展開は李監督作品ならではの味わい。

インタビューでは、監督の “笑い”へのこだわりも伺いました。

「結婚3年目の危機?!」

サラリーマンのじゅん(安田顕)が仕事を終えて帰宅すると、玄関で妻のちえ(榮倉奈々)が口から血を流して倒れていた!

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

動転するじゅんだが、「ククク……」と笑うちえの傍らにはケチャップ。

ちえは死んだふりをしていたのだ。

 

それからというもの、家に帰るとちえは必ず死んだふりをするようになった。

ある時はワニに喰われ、ある時は銃で撃たれ、またある時は頭を矢で射抜かれ…

次第にエスカレートしてゆく“死んだふり”。

 

最初は呆れるだけのじゅんだったが、

何を聞いても「月が綺麗ですね」と笑うだけのちえにだんだん不安を覚え始める。

寂しいだけなのか、何かのSOSのサインなのか―。

ちえの謎の行動には、“秘密”があった。

結婚3年目の夫婦が、一風変わったコミュニケーションにより見つけ出した答えとは?

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

「伝えたいのは、優しさ」

――今回、脚本にも参加されているのでしょうか?

李監督:構成とエピソードは多分に僕のアイデアを反映させてもらって、坪田さんのセリフはすごく良いので、最後坪田さんがいいセリフを書いてくれました。僕は坪田さんとは初めてだけど、とてもマッチして、本当に素敵な脚本家で、僕としてもいい出会いをさせてもらったなと思っています。

――「月が綺麗ですね」というセリフは?

李監督:「月が綺麗ですね」は俺のアイデアやねん。この言葉は2割くらいは知っていて、8割の人は知らないかなと思って。そうするとミステリー感が増して、(ちえの気持ちを表す)暗号みたいな感じで。

――じゅんとちえだけでなく、佐野(大谷亮平)と由美子(野々すみ花)など色々な夫婦が登場しますが、それぞれの夫婦に込められた思いは?

李監督:じゅんとちえが中心ではあるんですけど、浮世離れした感じも出ちゃうかなと心配があったので、色んな夫婦から彼らが自分たちの夫婦像をつくるために、学ぶために置いた方が良いと思いました。

夫婦の映画なんですけど、テーマは僕の中で夫婦ではなかったんですね。ちえさんが死んだふりをしていたのは自分のためではなかったと思うんですよ。じゅんさんがなぜ苦しんでいたかというと、ちえは何を考えてどうしたいんだよ、と。佐野さん夫婦もお互いのことを考えていたんだけど、ここを超えてはいけないということがあった。誰も自分がこうしたいということをやっていないんですよ。全部相手のことを思っているんですよ。相手のことを思っているが故に苦しんだり、誤解されたりするんですね。友人関係と違って夫婦は嫌でもコミュニケーションをとらないといけないでしょ。

だから、結局僕がこの映画を通じて描いた、と思うのは、伝わるかはわからないけど、優しさなんですよ。相手を思うことって、とっても邪魔くさいし、しんどいし、誤解もされるし、でもこんなに素敵なことってないんじゃない?と。そのために色んな夫婦を配在したということですね。

僕はすごい偉い人から学ぶっていうのは好きじゃないんです。前の「神様はバリにいる」でも、アニキがめちゃくちゃなことを言うわけよ。でもキャラクターはめちゃくちゃだけど、まっとうなことしか言ってないんですよ。だから今回もそうで、じゅんさんの上司(浅野和之)が、いい上司ではなくて、ちょっと大丈夫かい?っていう人が言うと効くかなと思って。何かを抱えている人たちの方がじゅんとちえは多くを感じられるんじゃないかと。

あとは、僕は脇役好きだから、そこに命をかける。マンションの管理人とか大好き。ああいうところを一番頑張って演出する。

――今回、主演の榮倉奈々さんを絶賛されていますね。

李監督:僕が描いたちえとは違っていましたね。榮倉が演じたちえの方がはるかに素敵でしたね。前半の死んだふりは思いっきりやらないと面白くないんですよ。一転、後半はドラマになっていくじゃないですか。2時間の中で同一人物で演じ分ける。相当難しいんですよ。後半のことを考えながら演じたら、死んだふりをおとなしめにしておこうかなと思うわけですよ。そうしたら面白くないやん。(成立したのは)彼女が俯瞰で最初から最後まで捉えて、客観的にコントロールしながら演じられたからだと思いますね。これは並みの役者じゃできないですね。“榮倉、やるなぁ!”って現場でも言ってましたけど、今回初めてご一緒してここまでやるとは思いませんでしたね。

――旦那さん役の安田さんについては?

李監督:笑いというのは受け手があって初めて成立するんですね。下手な役者がすると大げさなリアクションするんですよ。笑えない。これはセンスだからなかなか演れない。芝居をジャズに例えるときがあるんですよ。ジャズというのはフリーだから、何が一番大事かというと、有名なミュージシャンが、バークリー音楽院の学院長に、“上手くなるにはどうしたらいいんですか?”って聞いたら、“人の演奏をちゃんと聴くことです”と答えた。若い役者は自分が演ることしか考えてない。人のリアクションをちゃんと聴いた上で反応しないといけない。受ける芝居というのは相当難しいし、一番大事やねん。

もうひとつは、原作よりも旦那さんの年齢が上になっているというのは、観客はじゅんの苦悩から見ていくわけだから、若いイケイケの俳優さんが演じて苦悩が出ると思う?そしたら笑われへんねん。これは辛いよねというリアリティが必要。そうすると芝居が上手くないとあのリアクションができないというときに、安田さんが頭に浮かんだ。苦悩が出てるでしょ?苦悩感が辛いんじゃなくて、可笑しく見える。それが大事だと思うんですよね。

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

――この作品を見て夫婦っていいものだなと思いました。

李監督:うちの嫁ももうちょっと言うことをきいてくれると思ったけど、意外ときいてくれない。洗濯物には柔軟剤入れてくれって言ったのに、全然入れてくれない。もう負けた、完全に。いつもパリパリのバスタオルで拭いてる。

やっぱりね、女の人ってミステリーだと思うのよ。大奥は江戸城だけど、小さな奥はどの家庭にもある。嫁は大学の同級生だから何でも知ってると思うけど、わかれへんもん。知ってることもあるけど、わからんことも出てくるもん。謎や。

「監督のお陰です」

「デトロイト・メタル・シティ」で李監督と松山ケンイチさんにインタビューと舞台挨拶の司会をさせてもらったのは10年前です。

監督はそのときのことを覚えていてくれました。

「俺、めちゃくちゃいじったよな?」

そうです。私があまりに下手だったので覚えていてくれたのです。

でもその時おそらく見かねて監督がくださったアドバイスが、今でも私のインタビュアーとしての基礎になっています。

10年前の失敗と監督の言葉がなければ、今のように映画に携わることはなかったと思います。

言ってみれば、このコラムを書かせてもらえるのも、李監督のお陰ですね。

今回のインタビューで、冗談でも「成長したな~」と言ってもらえたことは、この10年が報われたような至極の喜びでした。

また、お会いできるようにコツコツ頑張ります!

 

 

『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』
公開日:2018年6月8日(金)
劇場:全国にて
配給:KADOKAWA
公式HP:http://tsumafuri.jp/
(C) 2017「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会

▼作品ページ
https://cinema.co.jp/title/detail?id=81721

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

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神取恭子(かんどり きょうこ)

フリーアナウンサー、椙山女学園大学非常勤講師。愛知県西尾市出身、1977年生まれ。
現在は名古屋テレビ放送の情報番組「デルサタ」、音楽番組「BOMBER-E」にレギュラー出演。
2002年から名古屋テレビ放送(メ〜テレ)の局アナウンサーを勤め、番組「ドデスカ!」や「昼まで待てない!」などで映画監督、俳優、ハリウッドスター500人以上にインタビューを行い、舞台挨拶の経験も豊富。
他にも、報道現場でのリポートやスポーツ番組のリポーターを勤めた。
ANNアナウンサー賞 ナレーション部門受賞。
趣味は映画鑑賞(年間200本以上)、お肉を食べること(お肉検定1級)、プロレス観戦。

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