vol.36『万引き家族』是枝裕和監督、リリー・フランキーさん舞台挨拶

万引き家族

「パルムドール!」

言わずと知れた『万引き家族』。

第71回カンヌ国際映画祭 最高賞 パルムドール 受賞!おめでとうございます!

是枝監督の作品は毎度期待値高めで拝見するのですが、今回の『万引き家族』はその上の上を行く本当に素晴らしい作品でした。

物語の後半から、この“家族”の姿が違ったものに見えてきます。

私は本業はアナウンサーです。世の中で起こる事件などについて伝える立場として、自分の役割に疑問が湧いてきました。本当に本当のことを伝えているのか。ちゃんと曇りのないフィルターで物事を捉えているのか。

皆さん、それぞれの立場でどうお感じになるでしょうか?

劇場公開されたらもう一度観に行きたい。

安藤サクラさんのあの表情を思い出すだけで泣けてくるのです。

「盗んだのは絆」

万引き家族

街角のスーパーで、鮮やかな連係プレーで万引きをする、父の治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)。肉屋でコロッケを買って、寒さに震えながら家路につくと、団地の1階の廊下で小さな女の子(佐々木みゆ)が凍えている。母親に部屋から閉め出されたらしいのを以前にも見かけていた治は、

高層マンションの谷間にポツンと取り残された平屋に女の子を連れて帰る。母の初枝(樹木希林)の家で、妻の信代(安藤サクラ)、彼女の妹の亜紀(松岡茉優)も一緒に暮らしている。信代はボヤきながらも、温かいうどんを出してやり名前を聞く。「ゆり」と答える女の子の腕のやけどに気付いた初枝がシャツをめくると、お腹にもたくさんの傷やあざがあった。深夜、治と信代がゆりをおんぶして団地へ返しに行くが、ゆりの両親が罵り合う声が外まで聞こえる。信代には、「産みたくて産んだわけじゃない」とわめく母親の元に、ゆりを残して帰ることはできなかった。

翌日、治は日雇いの工事現場へ、信代はクリーニング店へ出勤する。学校に通っていない祥太も、ゆりを連れて〝仕事”に出掛ける。駄菓子屋の〝やまとや”で、店主(柄本明)の目を盗んで万引きをするのだ。一方、初枝は亜紀を連れて、月に一度の年金を下ろしに行く。家族の皆があてにしている大事な〝定収入”だ。亜紀はマジックミラー越しに客と接するJK見学店で働き、〝4番さん(池松壮亮)”と名付けた常連客に自身と共鳴するものを感じ、交流がはじまる。

春の訪れと共に、「荒川区で5歳の女の子が行方不明」というニュースが流れる。両親は2ヶ月以上も「親戚の家に預けた」と嘘をついていたが、不審に思った児童相談所が警察に連絡したのだ。ゆりの本当の名前は「じゅり」だった。呼び名を「りん」に変え、髪を短く切る信代。戻りたいと言えば返すつもりだったが、じゅりはりんとして生きることを選ぶ。信代は、「こうやって自分で選んだ方が強いんじゃない?」と初枝に語りかける。「何が?」と聞かれた信代は、「キズナよキズナ」と照れながらも、うれしそうに答えるのだった。

時は流れ、夏を迎え、治はケガが治っても働かず、信代はリストラされるが、それでも一家には、いつも明るい笑い声が響いていた。ビルに囲まれて見えない花火大会を音だけ楽しみ、家族全員で電車に乗って海へも出掛けた。だが、祥太だけが、〝家業”に疑問を抱き始めていた。そんな時、ある事件が起きる…。

「神様の祝福」

パルムドールを受賞してから初めて日本のお客さんの前に立つ、是枝裕和監督とリリー・フランキーさん。

5月28日にTOHOシネマズ名古屋ベイシティで行われた舞台挨拶にパルムドールのトロフィーを手に登壇されました。

万引き家族

リリーさん:重いんですよ、これ、すごく。しかも“ショパール”が造ってるんですよ。

――会場の皆様にご挨拶を。

リリーさん:僕はカンヌから先に帰ってきたので、それ以来監督と初めて会って、トロフィーも生を初めて見て、パルムドールを受賞してから初めてお客さんに観ていただくということで、色んな初めてがありまして、今日はどうも呼んでいただきありがとうございました。

是枝監督:まだ戻ってきて一週間経たないものですから、今日リリーさんにトロフィーを持っていただいて、“良かったですね”としみじみ控え室で二人でひつまぶしを食べながら語り合えて、ようやく“あぁ、いい賞を貰ったんだな”という実感が芽生えているところです。最高のかたちでこのトロフィーと映画を持ってやってくることができて、本当にうれしく思っております。今日はよろしくお願いします。

――リリーさんは是枝監督の作品は4度目ですね。

リリーさん:そうなんですが、こんなに長く撮影に参加させてもらったのは初めてで、撮影時間もすごくいい時間でした。高い水準のものを求められている、いい緊張感があって、だけど穏やかな空気が漂っているというか。

――監督について新たな発見はありましたか?

リリーさん:監督はだいたいこういう感じなんですよ。

是枝監督:すごくテンションが低いと言われ続けていてですね、現場でもあまり変わらないものですから。

リリーさん:「クローズアップ現代」で監督の撮影風景が出てたんですけど、それがたまたま海のシーンで、遠くにいるから大きな声を出してて、「オッケー!」とか「スタート!」とか言ってて、普段は全然そんなんじゃないのに(笑)。

是枝監督:あれ見てて、すごい監督っぽいなと思って。ちょっと大きな声出しているの見るのは恥ずかしいですよ。

リリーさん:普段は「はい、カット。僕はいいと思います。皆さんいかがですか。」みたいな。

 

万引き家族

――監督はまたリリーさんとお仕事をしたいとオファーしたそうですが、改めてリリーさんの魅力とは?

是枝監督:今回は脚本を書く前のプロットというあらすじの段階からリリーさんに当て書きをしている役なんですよね。「そして父になる」に出ていただいたのが初めての共同作業なんですけど、あの時の電気屋さんのお父さん、福山雅治さんのライバルのような存在なんですけど、子供を遊ばせているショッピングモールで、カウンターで病院の名前で領収書を貰いながら、脇にあるお菓子を“あ、これも”ってあとで追加するんですよね。それがすごくいやらしくて(笑)。この男のずるいところと、でも憎めない様子がすごく良くて、その延長線上にこの役を作ってみようと思ったのが最初でした。撮っていても色っぽいので、今回は特にいろんな意味で色っぽい瞬間を撮りたいなと思っていました。

リリーさん:ものすごく今回は脱いでますので(笑)。

――安藤サクラさんとの夫婦役はいかがでしたか?

リリーさん:本当に驚くぐらい素晴らしい女優さん。人間としても女性としても女優さんとしても、本当に素晴らしい人ですね。ビックリしました。

――松岡茉優さんは?

リリーさん:茉優ちゃんもそうですし、希林さんもそうですし、三世代のバケモノ女優っていうか。みんな上手いを通り越して、生々しいこと、すごいんですよ。そして子供も子供で生々しいじゃないですか。だから撮影中も“すごいな、この人たち”と眺めながらいた気がします。

――子供の演出といえば是枝監督ですね。

是枝監督:今回まったく台本は見せていないので、状況だけ説明して、その日朝集まったら、こういうシーンを撮るよって。“おじさんこう言うから、祥太こう言ってごらん”って。全部口で伝えていくやり方で通しました。オーディションでそういうやり方に適応できる子を残していくので、ふたりとも、たぶんストレスなく現場にいて、宿題もないので楽しく帰って、翌日また来る。今日は何するの?っていう。

――祥太役の城桧吏と一緒にいると楽しくて離れたくなくなってしまうのでは?

リリーさん:いつも貧乏な服しか家は着せられないわけじゃないですか。で、撮影が終わると、意外と私服がおしゃれで、美人のお母さんと帰っていくのを見るのが切なくて。

是枝監督:リリーさんは撮影がないときも、寂しいのか、僕のLINEに“今日、桧吏はどうしてますか?”ってくるので、現場で写真を撮って送ってあげてたんですけど。本当に寂しかったんですね?

リリーさん:そうですね。寂しいのと、ちゃんとやれているのだろうかというので。でもね、俺が居なくてもめちゃくちゃ楽しそうにやっているのを見て、それはそれでショックでした(笑)。

――お天気にも恵まれたそうですね。

リリーさん:色んなものに恵まれたというか。東京で珍しく大雪が降って、普通だったら撮影が中止になるところなんですが、雪を撮ろうということになって。子供たちがびしょ濡れになって帰ってくるシーンがあるんですけど、それも天然の雨が降ったり。そこで監督とスタッフが適応してできるという、いいハーモニーでないとなかなか対応できないと思いますね。

是枝監督:現場で起きたハプニングも含めて、何を面白がって作品の中に残していくのかというのを、それに対応して考えていくのがとても楽しいので、今回はそういうのがすべて上手くいったんですよね。雨が降ったり雪が降ったりで撮影を止めちゃって、シーンをすごく眩しいものに変えてしまう危険性もあるんですけど、今回はたぶん映画の神様がいるとすると、神様に色んな場所で祝福された映画なのかなと思っています。

リリーさん:また子供が成長期ですから、撮影中に歯が抜けたりするんです。それを見た監督がまた脚本に活かしていくという、すべて起きたことがいい方向に最終的にまとまっていったんですね。

――最後にご挨拶を。

リリーさん:すごくまとまったすごくいい調和の中、撮影中もすごく良いものができてる気がするって毎日思いながらやっておりまして、カンヌに連れて行ってもらって、是枝さんに“パルムドール獲ってくださいね”って、信じて祈ってましたけど、なかなか思ったことがその通りになるなんてことはないじゃないですか。監督が受賞のときにおっしゃっていたように、隔たれたものが繋がった瞬間をみせてもらったというか。このポスターを見て分かるように、ものすごくドメスティックなものを表現しているのに、ひとつ

ひとつのディテールがどんな国の人にも伝わったということがすごく嬉しかったので、これからたくさんの方に観ていただけると嬉しいです。

 

万引き家族

是枝監督:まず、キャストのアンサンブルが本当にうまくいった映画だなと自分でも思っていて、現場で見ていて“あぁ、ずっと撮っていたいな”という感覚だったんですよね。出産直後のサクラさんがいて、僕の映画の作り方を熟知している希林さんとリリーさんがいて、そこに松岡さんが加わって、子供が二人とてもいい形で入ってという。今回は初めて近藤さんというカメラマンと組んだんですけど、そういうスタッフワークも含めて、今までのチームと新しく加わったチームがとてもいい出会い方をして、奇跡的に誰か1人でもキャストやスタッフが違う人だったら絶対こんな形でこの映画は出来上がっていないなという、奇跡的な化学変化が現場で起きた映画だと思っております。とにかく映画を楽しんでください。

 

万引き家族

是枝監督とリリーさんのいつも通りの、でもどこか嬉しさが込み上げているような、そんな舞台挨拶でした。

監督は事務所にパルムドールのトロフィーを持っていって、スタッフの皆さんと、アイスのパルムを食べながらお祝いしたそうですよ(笑)。

 

 

『万引き家族』
公開日:2018年6月8日より
劇場:TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて
配給:ギャガ
公式サイト:http://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/
(C) 2018『万引き家族』製作委員会

https://cinema.co.jp/title/detail?id=82540

万引き家族

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神取恭子(かんどり きょうこ)

フリーアナウンサー、椙山女学園大学非常勤講師。愛知県西尾市出身、1977年生まれ。
現在は名古屋テレビ放送の情報番組「デルサタ」、音楽番組「BOMBER-E」にレギュラー出演。
2002年から名古屋テレビ放送(メ〜テレ)の局アナウンサーを勤め、番組「ドデスカ!」や「昼まで待てない!」などで映画監督、俳優、ハリウッドスター500人以上にインタビューを行い、舞台挨拶の経験も豊富。
他にも、報道現場でのリポートやスポーツ番組のリポーターを勤めた。
ANNアナウンサー賞 ナレーション部門受賞。
趣味は映画鑑賞(年間200本以上)、お肉を食べること(お肉検定1級)、プロレス観戦。

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