『砂時計』松下奈緒 インタビュー

2008.04.11

“コミックでドラマで人気沸騰のラブストーリー映画版ヒロインは、多才なこの美女!”
出席者:松下奈緒
松下奈緒
ピアニストとしてライブ活動も展開し、女優としても次々と新たな作品に挑戦する松下奈緒主演の新作『砂時計』がゴールデンウィークに公開される。原作は月刊ベツコミ(小学館)にて03年から3年2ヶ月にわたって連載された芦原妃名子による同名の大人気コミック。07年のTBS系全国ネット「愛の劇場」でのドラマ化に続き、いよいよビッグスクリーンに登場する。メガホンをとったのは『春の雪』『県庁の星』などで脚本を手がけた佐藤信介。監督自ら書き上げた脚本はドラマチックなラブストーリであると同時に、人が人を思いやることの難しさと尊さを丁寧に描いている。中高生時代を担った夏帆と2人でヒロイン・杏の12年を演じた松下奈緒に話を聞いた。


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今回のヒロイン・水瀬杏役は、少女時代の夏帆さんと2人でひとりの役を演じられたこともあり、ちょっと今までとは違ったんじゃないでしょうか。たとえば『未来予想図~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~』のときは自分のやりたい仕事という目標に向かって行く女性ということで作りやすかったのではないかと思うんですが、今回はそういう面は描かれないですよね。
■松下:「そうですね。最終的に幸せになりたいと願う。それだけが生き甲斐だったと思うんです。その中で、どうして行けばいいのかって暗い部分に落ちて行ってしまうんですが。今回、さすがにわたしはもう高校生役はできないと思うので(笑)、ひとりの女性を2人で演じるということだったんですが、若いときと大人になったときとで、なんとなく雰囲気は残しつつも杏には違いがあるんです。もちろん、同じトラウマを抱え、同じようなことで悩んだりはしていますが、敢えて子どもの頃を真似しようとか考え過ぎることはなかったです。でも、監督に、あのとき夏帆さんはどうやって演じてましたかとかは聞いたりしたこともありましたけど」
松下奈緒
出来上がった作品を拝見すると、松下さんと夏帆さんは似てらっしゃるわけじゃないのに、とても繋がりが自然でした。
■松下:「ほんとですか? 台本を読んだ感じでは、最初は大丈夫かなって不安な部分もあったんですが、繋がったものを観てみるとちょっとずつ成長して行く姿をうまく描いていただいて、落ち着いて観れました」
佐藤信介監督からはどんな指示や要望がありましたか?
■松下:「今回は、わたしが個人的には経験したことのないような思いをたくさん映画の中で経験するんですが、監督からは、そのままの松下さんでやってくださいと言われたんですよね。それですごく気持ちが楽になって救われました」
佐藤監督が脚本も手がけられているわけですが、原作コミックもドラマ版もとても長い作品で、それを2時間に収めた脚本を最初に読まれたときは、どんな感想を持ちましたか?
■松下:「漫画原作も読ませていただいたんですが、脚本は、人生の中の良いところと悪いところをすごく上手く集約してあってすんなり読めました。映像になったときに、自分がどう演じれば違和感なく見せられるのかなという方が心配でした」
杏は母親の死を経て深く悩むようになりますね。人間の強さと弱さについてのセリフも何度か出てきますが、「弱い」というのはどうしてもマイナスのイメージがあるようです。でも、大悟だけは弱さを否定しませんね。松下さんご自身は強さと弱さについてどう思いますか?
■松下:「人って強い人ばかりじゃないですよね。弱い自分を知っているけれども、強がってしまうとか。わたしもそうだし、人間ってそうですよね。〈弱さの上に強さがある〉っていうセリフもあるんですが、杏ちゃんの場合は、すごく弱くて脆くて、ほんとうに壊れそうな時期があるんですけど、それは自分でもよくわかっていて、でも、周りの人があれだけ手を差し伸べてくれるというのは杏の魅力かなと。周りが強くさせて行くっていうのが印象的ですね。愛されるんだなって」
そこがまた本人にとってはプレッシャーになっているのかなと、
■松下:「そうですね。自分が傷ついてしまっているのが分っていて周りも自然と傷つけてしまう。それでも、周りがちゃんと助けてくれるんです。そうさせる杏ってすごいなって思います」
杏と大悟はずっと一緒にいることを心に決めながら、なかなか思うようにはなりませんが、もし、松下さんが杏の友人だとしたら、悩める彼女にどんなアドバイスをしますか?
■松下:「高校生のときに、大悟を押しつぶしてしまうかもしれないって杏は思うわけですが、それは杏だけがそう思っていて、周りは誰もそんなこと思ってないんですよね。その時点でわたしだったら、それは間違ってるよって言ってあげたいですね。そうなると、もっと幸せに、お母さんのことを忘れるくらい幸せなことを経験できたかもしれないし。かわいそうだなとは思うんだけど応援してあげたいですね、友だちとしては」
『砂時計』
あの時点から松下さん演じる大人の杏が登場するまでの間は描かれていませんが、きっと色々な葛藤があったんでしょうね
■松下:「描かれてはいないんですけど、大人になるに連れて色々考えただろうし、子どもの頃には考えつかなかったことなんかも。すべてがクリアに描かれているわけではないんですが、そこも魅力だなって思うので、想像力を働かせて観てほしいですね」
杏を見守る人たちの中でも、おばあちゃんの存在は特別だと思います。おばあちゃんの発する「しゃんとせい!」には厳しさと深い愛情を感じました。演じられた藤村志保さんとの共演の感想を聞かせてください
■松下:「ほんとうに、〈おばあちゃん〉と言いたくなるような感じでした。病院のシーンで初めてぶつかるお芝居をさせていただいて。あのときって自分のことを忘れてお芝居ができたんです。普段の生活であれだけ泣くこともないですし。たしかテストのときに、こうやって(頬を両手で挟んで)、〈しゃんとせい!〉って言われたんですよ。それが自分のことを言われているような気持ちになったんです。それで自分のことを忘れて杏になったのかなって。ほんとうに藤村さんは、おばあちゃんだなって改めて感じました」
迫力のあるシーンでした
■松下:「大悟にもあそこまで怒られたことないですしね。もちろんお母さんにも。怒られるっていうか、ちゃんと喝を入れられるっていうか。それはやっぱりおばあちゃんにしか言えない言葉だと思うし。そういう意味で、母親以上に杏ちゃんの拠り所になったんでしょうね」
杏はお母さんに買ってもらった砂時計をとても大事にしていますが、松下さんがずっと大事にしているものってありますか?
■松下:「わたしが捨てられないのは、ピアノかな。子どもの頃からずっと持っているピアノをいまだに部屋に置いています。それはグランドではなくてアンティークのピアノで、もう音は鳴らないんだけどずっと大事にしてますね。弾けないんですけど」
杏は砂時計を12年間大切にしているわけですが、松下さんのピアノは12年どころじゃないですよね
■松下:「かれこれ20年くらい経ってますね(笑)。やっぱり嫌になるときもあるし、一つのことを続けるって大変なことだと思うんですよね。だから、ひとりの人を思い続けるってことも大変なことなんだなって思いますね」
今回、松下さんはナレーションもされていて、「忘れられない風景」というフレーズがありますが、松下さんご自身にも「忘れられない風景」はありますか?
■松下:「東京に出てきてから何年も経ちますけど、やはり子どもの頃走り回っていた近所ですね。実家の周りって今回の島根のような風景だったんです。そういう田舎の風景は東京ではなかなか見られないし、田んぼの匂いとか、虫の声とかすごく懐かしくなりますね」
島根ロケでとくに印象に残っている場所はありますか?
■松下:「浜辺を歩くシーンがたくさんあったんですけど、空もすごくきれいだったし、波もきれいだったし、日本海ってすごいなってあらためて感じました。とんびも翔んでいて、どこをとっても絵になるというか。のどかな雰囲気が杏の性格とリンクするのかなと思いました」
仁摩サンドミュージアムでは巨大な一年計砂時計もご覧になったんですよね
■松下:「はい。もっと一日一日を大事に生きようと思いました(笑)。1年ってあの砂時計のサイズなんだと思うと、正直ちょっと小さいかなと。もっと大きくてそんなに簡単には動かせないものだと思っていたんですけど。ちょうど年末ぐらいのロケだったので、落ちて行く砂を見て、今年ももうあれだけしかないんだって。1年って早いなって思っても、目に見える早さってなかなか見られないですから。1年ってあっという間だなって、ちょっと怖くなりました(笑)」
砂が落ちて行く様にドラマを感じますね
■松下:「戻すことはできないんだなって思いました(笑)。その一年時計を見て『砂時計』って題名はほんとうにぴったりだなって思いましたね」
幸せを求める杏を演じた松下さんが思い描く、現在、あるいは未来の幸せとは何ですか?
■松下:「女優さんをこれからも続けて行きたい。それが夢ですね。続けるっていうことは、楽しみでもあるし、大変なことでもあるし。それを叶えられたらいいかなと思います」
原作コミックもドラマ版も大変な人気ですが、映画『砂時計』ならではの魅力をアピールするとすれば、それは何ですか?
■松下:「長い12年間を2時間にきゅっとシンプルにしたわけですから、一つも見ないでいい無駄なシーンってないんです。2人で演じているけれども、ひとりの女性の生き様を感じることができる作品だと思いますので、ぜひ映画館で観てほしいですね。島根の風景もきれいなので、なぜ、島根なのかということもあらためて考えながら観てほしいです」
では、最後に公開を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします
■松下:「いよいよ『砂時計』が4月26日から公開になります。ぜひ、ひとりではなく大切な人と観てください。劇場でお会いしましょう」
美しいシーンも、涙を誘うシーンも、名ゼリフも随所に盛り込まれた映画版『砂時計』。可憐な夏帆ちゃんと、憂いをたたえた松下奈緒さん競演のヒロイン・杏の幸せの行方、気になります!
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『砂時計』
配給会社:東宝
公開日:2008年4月26日 (土)
劇場情報:TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国東宝系にて
公式HP: http://www.sunadokei-movie.jp/
あらすじ
14歳の杏は両親の離婚を機に東京から母の実家のある島根に引っ越してくる。同級生の大悟や藤、藤の妹・椎香という友だちもできて新しい生活に馴染んでゆく杏とは対照的に、心身共に疲れ切った母・美和子は、ある日、ひとり死を選ぶ。悲嘆に暮れる杏を支えたのは大悟の優しい愛だった。つき合い始めた2人はずっと一緒にいることを誓うが、高校進学を前に杏は父と暮らすため東京へ戻ることになる…。
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人物紹介
松下奈緒
松下奈緒
1985年2月8日生まれ、兵庫県出身。モデルを経て04年にドラマ「仔犬のワルツ」で女優デビュー。映画では06年の『アジアンタムブルー』で初のヒロイン役をつとめる。他の出演作に『未来予想図~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~』『XX(エクスクロス)~魔境伝説~』『チェスト!』がある。ピアニストとしても活躍中。
取材・文:齊田安起子



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