『4ヶ月、3週と2日』クリスティアン・ムンジウ インタビュー

2008.02.29

“「映画作りに対する紳士的な態度」で映画を作りたかった”
出席者:クリスティアン・ムンジウ
合同インタビュー
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チャウシェスク独裁政権末期のルーマニアを舞台に、望まない妊娠をしたルームメイトの違法中絶を手助けするヒロインの緊張感に満ちた一日を描いた作品。周到なリサーチと時代考証に裏付けされたリアリズムを基調に、大胆なカメラ・ワークと俳優たちの息づまる熱演による衝撃的な場面の連続で、観る者の視線をラストシーンまで釘付けにする。2007年カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、新しい“女性映画”の地平を切り開いた。
今回教師、ジャーナリストといった様々な職歴を持ち、本作の舞台ルーマニア出身で当時主人公達と同年だったクリスティアン・ムンジウ監督にお話を伺った。


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本作はワンシーン、ワンカットが多様されていますよね。劇中で主人公のオティリアが彼氏の家で食事をするシーンは終始同じアングルで撮影されていますが、そこのこだわりなどありましたか?
■クリスティアン・ムンジウ監督(以降、クリスティアン):「本作はワンシーン、ワンカットのスタイルで撮影していこうと決めていました。それは俳優が感情の動きなどリアルに表現しやすいだろうと思ったからです。カメラを止めたり、また回したりの繰り返しをすると感情移入が出来ないと思うんです。出演俳優を決めるときも最初から演技を10分以上続けられる人を選びオーディションをしました。それには実力が必要ですよね。
ディナーシーンは食事をしている人全員を映したかったのでラージフィルムを使用しました。ただ全員を映すと何かおかしかったんです。『最後の晩餐』みたいで(笑)。あのシーンは彼女の心情を観ている方に伝えるのが目的なので、結果もっと彼女に寄って撮影し、彼女を真ん中に置いて、人物は多少見切れている感じにしました。あとは見切れてフィルムには写っていない場面を想像して観てもらいたかったからなのも一つあります。あのシーンは本当に撮影が大変でした。役者達は何気ない会話のような演技をし、全員分の台詞を全部覚えないといけない、しかも10分以上演技を続けないといけないからね。最終的にあのシーンには2日間かけて撮影しました」
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ホテルの一室での1シーンでは、3人しか登場してないのにこの映画で何を語らんとしているのか、劇中の時代背景、などが全てわかる魅力的なシーンだったと思います。
■クリスティアン:「あそこは25分間のシーンをわずか3ショットだけで撮影しました。ベベ役のヴラド・イヴァノフの演技が人を魅了してこの作品の一つのリズムになっていると思います。本作のなかでも一番重要なシーンでした。オティリア、ガビツァの恐怖感を観客に伝え、緊迫した雰囲気に2人はとてもアグレッシブルに行動します。ただリアルにああいうシーンを作ったらこうなると思うんです。ベベが何を伝えようとしているか、彼の言葉が何を意味しているのか良く分からないと思うのですが、あの喋り方があの時代の特徴なんです。交渉をする際にいかに自分を有利な立場に持っていくかと考えたときに生まれた喋り方です。役者達は非常に精神を削って疲れたシーンだったと思います。1日に3~4テイクしか撮影できませんでした」
これほど長回しを多様している映画も少ないと思うのですが、長回しを多様することでこの作品にどう言う意味合いを持たせたかったのでしょうか?
■クリスティアン:「“映画作りに対する紳士的な態度”を本作に持たせたかった。どうしても映画監督が決めがちな形式的な撮り方があると思うのですが、それを避けて通りたかった。映画は作為的にストーリーを持っていくもので、音楽を入れるのもそうですよね。それは物語には関係の無いことで、だって街を歩いていて急に音楽が流れてくるってありえないじゃないですか。それは演出に伴った技術的なものなんですが。そういう作為的な事をやらなくても、俳優の演技だけで物語を伝える事が出来ることを僕らは知って欲しかった。そうすると今までの演出に全てクエスチョンを付けたくなるんです。一つは編集。どうしてカットするのか?お客さんは自由に自分の好きなシーンを見ればいいだけの話ですからね」
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主人公の友達ガビツァの言動や行動が共感出来ない部分がありました。ただ主人公オティリアがもし困ったことがあったら「彼氏ではなくガビツァに助けてもらう」と言いますよね。本作の時代設定は1897年ルーマニアなんですが、監督ご自身も当時オティリアたちと同年代だったとお伺いしています。当時の若者言動や行動はどういったものだったのでしょうか?
■クリスティアン:「今判断するのは難しいですよね。その時代に身を置かないと分からない事だと思います。共有の敵があったので連帯感は強いですよね。だからと言って彼女等の責任感が強いかどうかと聞かれると、そうではないと思います。共産主義に住んでいたときの悪い副作用として、檻の中に閉じ込められた動物の様な反応しか出来なくなっていたんです。倫理観とかね。平穏な暮らしの中でしか倫理観は生まれないと思うんだ。生き延びるというプレッシャーがあったからね。若者に限らずみんなそうでしたよ」
本作はその時代の空気を身近に感じられるほどリアルな作品でした。監督はスタジオは嫌いで殆どロケで撮影するとお伺いしたのですが、土地の持つ空気にインスピレーションを受けて撮影しているのでしょうか。
■クリスティアン:「セットはやっぱり人口的ですよね。どんなに良いセットを組んでも嘘が出てしまう。内なる物、外なる物みないに、実際に観ている方は気づかないかもしれませんが、役者の演技も変わってくるんですよ。土地もシンメトリカルなものを選んで撮影したし、すごくフラットに撮影しています。物語を表面上に出しつつも、バックグラウンドには時代背景を匂わせるようにしました。土地とは関係ないかもしれませんが、面白いシーンがあって、360度全て映すシーンがあります。実はカメラにスタッフが映らないように、カメラの後ろに20人くらい連なって一緒に動いています(笑)。あのシーンだけはどうしてもスタッフの足音が入るので音楽を使わざるをえませんでした。セットも使ってはいますが、リアルに見えるように自分達個人ものを置いたりとかしました。時代背景を知ってもらうために細かい細工も沢山しました」
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『4ヶ月、3週と2日』
配給:コムストック・グループ
公開:2008年3月1日
劇場情報:銀座テアトルシネマほか全国にて順次公開
公式HP:http://www.432film.jp/



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