ジブリ美術館 中島館長インタビューその1

2007.12.12

“『雪の女王』を紹介せずして次に進めません。”
Kantyo1_2
今年の春に公開された『春のめざめ/同時上映:岸辺のふたり』を皮切りに『アズールとアスマール』、そして『雪の女王<新訳版>/同時上映:鉛の兵隊』を配給する“三鷹の森ジブリ美術館”。どの作品もクオリティーが高く、手間隙と作品への愛情が感じられるものばかりです。 今回美術館として映画配給をすることになった経緯と、12月15日に公開される『雪の女王<新訳版>/同時上映:鉛の兵隊』について三鷹の森ジブリ美術館 館長である中島清文(なかじまきよふみ)さんにお話を伺った。
※インタビューの最後に現在ジブリ美術館で行われているギャラリー展示「『雪の女王』とその時代」の様子も写真で掲載しています!


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三鷹の森ジブリ美術館として映画配給をするまでの経緯は?
■中島清文 館長(以後、中島館長):「現在、ジブリ美術館では絵本を題材とした企画展示『3びきのくま』を開催しています。企画展示で絵本を題材にするのは、初の試みです。元々、ジブリ美術館は、アニメーション美術館として活動していますので、昨年まではアニメーションを題材に企画展示を開催していました。最初は、『千と千尋の神隠し』『天空の城ラピュタ』などジブリ作品に関係するのをやっていましたが、それだけでは題材も詰まるので、世界のアニメーターやアニメーションスタジオの紹介もしてきました。ロシアのアニメーション作家ユーリ・ノルシュテインさん、アメリカだったらCGアニメのパイオニアであるピクサー、イギリスでは『ウォレスとグルミット』で有名なクレイアニメーションの草分け的存在のアードマン・スタジオなどを紹介してきました。東京都現代美術館で開催されたディズニー・アート展を手伝ったりもしました。 
しかし、展示に少し不十分さを感じていました。宮崎監督も言っていたのですが、アニメーションは素材を展示して飾って見せるだけではなくて、フィルムで作品を見せるのが一番の紹介だと思ういます。美術館内には“土星座”という小さな映画館がありますが、そこでは長編作品を紹介できないですし、スタジオジブリ作品を隣において別の作品ばかりを紹介するわけにもいかない。それならきちんと外の劇場を借りて紹介していこうと、できれば普段はジブリやディズニー作品しか観ない方にも「こんなアニメーションもあるんだよ」と紹介したいと思いました。アニメーションを紹介されている劇場さんもいるので同じことをするのは意味が無いですよね。うちは宮崎監督、高畑勲監督の2人が影響を受けた作品であったり、2人が親交のあるクリエイターの作品、もしくは、2人が認めるような作品で、ジブリの志にあった新旧の名作を順番に紹介していこうと企画を立てました。これが、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーの事業です。
Kantyo2第一弾としては高畑・宮崎両監督と親交のあるロシアのユーリ・ノルシュテインのご縁で、彼の門下生にあたるアレクサンドル・ペトロフ監督の『春のめざめ』という作品を配給しました。油絵が動く本当にすごい作品で、ある意味セルアニメーション以上に手間隙をかけている作品です。次に高畑監督が長くお付き合いしているミッシェル・オスロ監督の『アズールとアスマール』を配給しました。ジブリ美術館ライブラリーを始めるきっかけとなった『王と鳥』は、2006年にスタジオジブリが配給に協力した作品で、高畑監督をアニメーションの世界に導き入れ、宮崎監督も映像表現において影響を受けている作品です。これは、かなりの反響がありました。
『王と鳥』が高畑勲監督をアニメーションの世界に導き入れたなら、『雪の女王<新訳版>』は宮崎駿監督が「アニメーションの世界で生きていこう」と志を新たにした作品です。これを紹介せずして次に進めませんね」
『雪の女王<新訳版>』を拝見させていただいて、物語のキャラクター・描写等の設定で宮崎駿監督が影響を受けている部分が多いと感じました。館長はどう思われますか?
■中島館長:「キャラクター設定などが影響を受けている・受けていないということ以上に、アニメーター達が表現しようとしている想いを受け継いで、宮崎監督は今に到る作品を作っているのかなと思います。どんな想いかというと、常に宮崎監督の作品は“運命に立ち向かう主人公”がいて「誰かを助けたい」「何かを護りたい」という思いで、様々な難関を乗り越える主人公像を描いていると思います。その出発点にあったのは『雪の女王』に出てくるゲルタで、ゲルタはカイを助けたい思い一つだけで、何も持たず、カイの居場所も知らず、カイを探す旅に出ます。しかも、旅の始まりには大事な靴を流してしまい裸足になって出発するんです。それでも目の前に立ちふさがる問題を解決しながらカイを助けようとする。そういった主人公の一直線な部分が一番影響を受けていると思います。
Yuki2_2それと川に身をゆだねるシーンがあるのですが、人間が自然に導かれ、自然と共に助け合って生きていく。一方で、『雪の女王』は自然の脅威の象徴ですよね。雪の寒さと厳しさ、ロシアの大地は怖さの象徴だと思いますし、それに対して最後に戦うのではなく向き合いそれぞれ生きていきます。自然の驚異の中で人がどう共に生きていくか考えさせられます。ときに自然は脅威となり、ときには自分を助けてくれる。そういった感覚も引き継いでいると思います。
もう一つは山賊の娘のシーンで象徴的なのですが、ゲルダの優しい綺麗な思いが伝わって、ちょっと斜に構えている彼女も心が浄化され優しくなれます。宮崎監督が言っているのですが「自分達の作る映画は所詮大衆映画であり、通俗映画である。入口は低くしてみんなに楽しんでもらうのだけど、それだけじゃなく心が浄化される部分がなければいけない。ただ一過性の「楽しかった」だけの作品では意味がないと考えていると思います。そういう意味では『雪の女王』が顕著に影響を与えていると思うのです。
当時のアニメの代表格としてはディズニーでしたが、ディズニーがハレの文化(ミュージカル仕立てで楽しくて全てが上手くいく世界)とするならば、『雪の女王』は「人間の世界はそれだけじゃないよね」ということを描き、それを教えてくれる作品だと思います。当時、宮崎監督が働いていた東映動画もどちらかというとディズニーのように作品を作っており、宮崎監督は「それでいいのか」と疑問を抱いていたようです。そして、ちょうどその頃にこの作品と出会って「こんな作品を作れば人を感動させることができるんだ!」と感じたそうです。やはり、宮崎監督は、この映画『雪の女王』を原点にその後も作品を作っているのではないかと思います」
Yuki1_2ゲルダの“無償の愛”がカイを助け出しますよね。“見返りを求めない行動”が今の世の中に必要なんじゃないかと思いました。
■中島館長:「今はどうしても功利主義というか、損得を考えてから行動するとか、結果が良い方向にむかう時にしか行動しないとかそんな風潮があります。情報を集めて「勝ち馬に乗ろう!」と。そうじゃなくて上手くいくかわからない、会えるかどうかも分からない、でも助けたいから何が何でも行く。そういうことは実生活でも必要だと思いますし、そんな主人公像はいいですよね」
今後どのような作品を配給していこうとお考えでしょうか。
■中島館長:「それは秘密なんですけどね(笑)。でも、路線的には3つくらいあって、1つはスタジオジブリと同じ志を持ったクリエイターの新作を紹介していくこと。そうは言ってもものづくりに信念を持っている人たちなので、残念ながら次々に新しいものが紹介できるわけではありません。その間は、高畑監督、宮崎監督が影響を受けた作品であったり、過去にお2人が観た作品の中でお墨付きの作品などを紹介して行きたいと思います」
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無償の愛・・・、素晴らしいです!『雪の女王<新訳版>』を観て、わたくし映画ナビスタッフ“若”はウルッときました。宮崎駿監督が「この道に進もう!」と決めた作品というのも納得です。これからも素晴らしい映画を配給してください。三鷹の森ジブリ美術館配給作品は要チェックですよ!
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三鷹の森ジブリ美術館 館長
中島清文(なかじまきよふみ)
1963年、栃木県小山市生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友銀行(現・三井住友銀行)に入社。2004年4月にジブリ美術館の管理・運営を行う財団法人徳間記念アニメーション文化財団の事務局長に就任。2005年6月に三鷹の森ジブリ美術館館長に就任。
三鷹の森ジブリ美術館HPはこちら>>
*ジブリ美術館は、日時指定の予約制です。入れ替え制ではありません。
チケット(入場引換券)は全国のコンビニエンスストア ローソンのみで販売しています。
『雪の女王<新訳版>/同時上映:鉛の兵隊』
配給:三鷹の森ジブリ美術館
公開:2007年12月15日
劇場情報:シネマ・アンジェリカほか全国にて順次公開
公式HP:http://www.ghibli-museum.jp/snowqueen/
(c) 2004 Films By Jove Inc. in association with Soyuzmultfilms studio
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ギャラリー展示「『雪の女王』とその時代」
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小スペースながら『雪の女王』が誕生してから現在に至るまでのロシアと日本の社会情勢を、年表形式で追った展示は中々見ごたえのあるものでした。特製の映像機器がいい味出してました!



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