『グミ・チョコレート・パイン』 森岡龍インタビュー

2007.11.22

「僕自身は”グミ”の速度。芯のある面白い人間になりたい」
出席者:森岡龍
『グミ・チョコレート・パイン』 森岡龍インタビュー
93年に発売された大槻ケンヂの小説「グミ・チョコレート・パイン」。誰もが一度は体験したことのあるじゃんけん遊びをタイトルに、自分のやりたい何かに向かって”チョコレート”の速度で進みたいと思いながらも、何も出来ずに焦る少年たちの姿を描いたこの人気作が、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)監督の手で遂に映画化された。
劇中で主人公・賢三の親友・カワボンを演じた森岡龍も、原作のファンだったのだそうだ。そんな彼に、自分の演じたカワボンのことや、現場での出来事などについて聞いてみた。


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この作品への出演が決まった時、どんな気持ちでしたか?
■森岡龍(以下森岡):「もともと原作のファンだったので、やっぱり決まったときはすごく嬉しくて。友人の間ではバイブルみたいな本だったので、まず大学の友人とかに報告して、それから家族にも報告しました。「がんばってよ」って、友達もすごく応援してくれましたね。あんまり良くないかもしれないんですけど、原作が好きだったんで台本も原作と比較しながら読んだりして、徐々に自分の役のカワボンが映画の中でどういう人間なのかを考えていきました」
原作を読んだはいつ頃だったんですか?
■森岡:「大学に入ってすぐだったので、1年半くらい前ですね。若い男の子たちが「何かしなきゃ、何かしなきゃ」って焦燥感にかられている、そういった気持ちがすごく共感できて。自分自身も「何かやりたいなぁ」と思っていた時期があって、それと重なったので、「面白いなぁ」って思ったんです」
ちなみに「やりたいと思っていたこと」とは何だったんですか?
■森岡:「元々映画監督になりたくて。それで役者も始めさせてもらったんです。主人公の賢三は音楽活動以外に、映画を撮りたくて8mmを回したりしている青年だったし、僕もバンドを組んでいたので、重なる部分は多かったですね」
森岡さんもバンドを組んでいたんですか?
■森岡:「未だにやっているんですけど、ちょっとバンド名はちょっと言いにくくて。「日活ロマンポルノイズ」っていう長ったらしい名前のバンドをやっています(笑)。バンドメンバーが日活ロマンポルノが好きで、じゃあバンド名は「日活ロマンポルノイズ」でって。なんかそんな名前に丸くおさまったんですよ(笑)」
賢三やカワボンたちが組んだバンド名前も長かったですよね。
■森岡:「「キャプテンマンテルノーリターン」、あれもけっこう長いですよね。今は噛まずに言えたんですけど、それを噛まずに言えるかとうかみたいなのが、一度現場で流行りましたね」
カワボンのキャラクターは、どんな風にとらえていましたか?
■森岡:「タクオは電気屋さんの2階に住んでいるっていう、そういう家族の背景とか親の経済力とかがちゃんと描かれていたんですけども、カワボンはそういう育ち方とか家族の背景っていうのがあんまり描かれてないんですよね。で、タクオの親の前ではいい調子ぶってまじめな青年とかを装えるから「頭の回転は速いヤツだなぁ」と思いながら台本を読んでいって。でもカワボンも賢三もタクオも3人とも――最後は山之上も加わって4人になるんですけど、やっぱりみんな「何か持ってるんだぞ」って思っていて、どっかでバカになれる。だからカワボンは常に頭がいいけどバカな部分があるっていう、そういった「頭の良さ」と「バカさ」のふり幅をけっこう考えながら演じました」
そのふり幅によって、演じる難しさが生まれたりしませんでしたか?
■森岡:「幅の難しさはありましたね。最初にバンドを結成するシーンがあるんですけど、そういった所ではみんなバカをやりつつも結構真面目だったりするんですよ。で、バンドを結成した後も、バカをやってるんだけど真面目っていう、そういう幅のあるシーンがたくさん出てくるんですよね。で、その幅の中で重要なポイントになったのが、やっぱりバンドをやめなければいけない、結局受験勉強をしなければいけないって賢三に告白するシーン。カワボンにとって最も真面目な方向に進路を決定するっていう。そこのシーンでは熱くなり過ぎずに、さらっと言えるようなところを目指しました」
ところで、現場ではメイキングビデオの撮影を担当されたとか。
■森岡:「クランクインの日は僕の撮影はないはずだったんですけど、前日に監督から携帯に電話があって、「明日、カメラ回さない?」みたいなことを言われて。「え、何ですか?!」って聞いたら「メイキングやらない?」って言われたんです。で、「じゃあ行きます!」って言って朝6時くらいに現場に行って、ずっとメイキングを回させてもらって。実を言うと劇中で出てくる賢三が撮った8mmの映像も、僕のカメラで撮ったものなんですよ。メイキングの撮影をするときに自分の8mmカメラを持っていったんです。そしたら劇中の8mmと一緒のフジカのカメラで、劇中の8mmは壊れていてフィルムが回らなかったんですけど、僕のは正常に動作するので、「じゃあそれを使って実際に撮っちゃおうよ」って話になったんです」
メイキングを撮っている時の共演者の皆さんの反応はどうでした?
■森岡:「やっぱり普通のメイキングと違って、被写体との距離が縮まって撮れたかもしれないですね。面白かったのが、初日に僕がずっとみすぼらしい格好でカメラを回していたら、黒川さんが本当に僕のことをメイキング担当のスタッフだと思っちゃったんです。その時は黒川さんとはまだ役者としてお会いしていなくて、で、後で共演するシーンになって「あれ? メイキングの方ですよね??」みたいになって(笑)」
KERA監督の演出法については、どんな感想を持ちましたか?
■森岡:「舞台を作っていらっしゃる方なので、リハーサルで1つひとつの動きを、すごく丁寧に、細かく演出されていたのが印象深かったですね。声の出し方だとか、トーンだとか、そういったことにもすごくこだわる監督で、すごくいい経験になりました」
原作の持っている焦燥感に共感するとおっしゃっていましたが、森岡さん自身はこうして映画に出演されるなど、自分の目標に”チョコレート”の速度で進んでいように思えます。自分では「グミ、チョコレート、パイン」だと、どの速度で進んでいると感じますか?
■森岡:「 “グミ”ですね。僕も今は美術大学に通っていて、ものを造る人たちに囲まれながら一緒に何かを製作しているんですけど、確かに俳優っていう肩書きは周りのみんなから見るとすごくうらやましいもので、「”チョコレート”じゃないか」っていう目線で見られているのかもしれません。そういった俳優としての経験は自分の中ではすごく貴重なものだと思っているので大切にしたいんですけども、でも作りだすものが充実しているかどうかっていうのは、俳優の経験とかよりも、人間に芯があるかどうかに因ると思うんです。僕自身、人間としての面白さがある人の作品を「面白いなぁ」と思っていますし。だから自分が果たしてそういった人間になれているのかを考えると、やっぱり「”チョコレート”ではないなぁ」と思いますね」
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『グミ・チョコレート・パイン』
配給:東京テアトル
公開:2007年12月下旬
劇場情報:テアトル新宿ほか全国にて順次公開
公式HP:http://www.gumichoco.com/
あらすじ
1986年、東京。高校2年生の賢三は、親友のカワボン、タクオらと夜な夜な集まっては、酒を飲みつつアンダーグラウンドなロックを聴く日々を送っていた。「他の奴らと俺たちは違う」と思いながらも、結局は何もできていない3人。そんなある日、賢三が趣味の名画座めぐりをしていると、映画館で偶然に、同じクラスの憧れの女の子・美甘子と出会った。突然の邂逅に慌てながらも賢三はなんとか彼女と会話することに成功し……。
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プロフィール
『グミ・チョコレート・パイン』 森岡龍インタビュー森岡龍
1988年、北海道生まれ。『茶の味』(04年)で映画デビューを果たす。その後『亡国のイージス』(05年)、『ナイスの森~安田君よしこ~』(06年)、『着信アリ Final』(06年)、『TWO LOVE~二つの恋の物語~』(06年)、 『13の月』(06年)に出演。今後も『クリアネス』『むずかしい恋』など公開予定作が多数控える、注目の若手俳優。
取材・文:井上真一郎



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