『ブレイブ ワン』 ジョディ・フォスター インタビュー

2007.10.22

5度目のオスカーノミネートなるか?ジョディが語る、渾身作『ブレイブ ワン』への熱き想い
出席者:ジョディ・フォスター
ジョディ・フォスター
大ヒット作『フライトプラン』『パニック・ルーム』で、どんな危機的状況にも決して屈することなく立ち向かっていったジョディ・フォスター。この作品では、最愛の恋人が殺されたことをきっかけに、人間としての最後の一線をも越えてしまう、今までにないタイプの女性を演じています。自ら製作総指揮を務めるとともに、脚本にも深くかかわり、鬼才ニール・ジョーダン監督を口説き落とした彼女が、本作品に対する熱い想いを語ってくれました。


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今回の作品には、明らかにこれまでの映画にはみられなかった新しい要素があると思うんですが、ジョディ・フォスターさん自身、どの点が一番気に入られて、この作品をつくりたいと思われたのですか?
■ジョディ・フォスター(以下、ジョディ):「私が気に入っているのは、この作品が二つの面を持ち合わせているところです。一つは、非常に知的な面。この映画には議論する点がたくさんあって、見終わったあと、とても不可解で複雑な疑問がたくさん生まれてくると思います。そしてその一方で、これとは正反対の、まったく知的とは言えない人間の人間らしい感情や原始的な衝動などを見ることができます。この二つの相反する面を持ち合わせていることが、この作品の魅力だと思うわ」
ブレイブ ワン
この作品は、ほとんどすべての人間の根底にある「倫理観」を試す作品だと思いますが、ご自身は、主人公エリカ・ベインの行動についてどうお考えですか?
■ジョディ:「彼女は間違っていると思うわ。でもこの映画は、彼女が正しいか、正しくないかを問うものではないと思います。観客は彼女の行為を判断するのではなく、エリカになって、彼女の見た世界を一緒に経験するの。そうやって、エリカとともに一歩ずつ進み、彼女の暴力性が徐々に増していくのを身近に感じていく。彼女と同じことが私たちにも起こりうるかはわかりませんが、私たちの中には、確実に自分たちの知らない、疑ったこともないような部分が潜んでいると思うわ」
エリカのラジオパーソナリティという職業は、作品にどのような効果をもたらしているとお考えですか?
■ジョディ:「作品のトーンを形作ったと思うわ。声から受け取るイメージっていうのは、どこか親密で、でも同時にすごく遠くに感じたりするでしょう。映画の始めの方で、エリカが『私は声であり、顔ではない』と言うシーンがあるけれど、まさに彼女は体を失った亡霊のようだった。でも一線を越えた後の彼女は、ラジオの声を通して、自分の肉体を感じさせるような『私は生きたい』というメッセージを伝えているの。結局それは誰かが死ぬという結果につながったんだけどね」
エリカは自らの暴行事件の後、それまでとは別人のように変化しています。“人間的な暖かいものから無機質で冷たいものへの変化”と感じられたのですが、その表現に何か工夫なさったことはありますか?
■ジョディ:「うーん、そうね、私は事件後のエリカは、以前にも増して人間らしくなったと思うわ。事件前は美しい、確かな人間らしさを持っていたけど、事件後の彼女には恐ろしい、どう猛な人間らしさが出てくる。この二つは正反対のようだけど、どちらも非
に人間らしいところだと思います」
演技にあたって、難しいところはありましたか?
■ジョディ:「ええ、本当に、とっても難しかったです。彼女のような、内面的な世界に生きる女性を演じるのは容易ではないし、見ている人たちを彼女の中に取り込み、拒絶させることなく最後まで彼女を感じてもらえるようにするのは大変だったわ」
マーサ刑事を演じた、共演者のテレンス・ハワード氏はどのような役者さんですか?
■ジョディ:「彼は私とはまったく違って、あまり考えず感情の赴くままに仕事をする人ね。私はセットに着くまでに、自分で決めたことのリストを作成したりして、撮影が始まる前からいろいろ考えるけど、彼はセットに着いてからどうするかを決める。その決め方もすごく感情に任せるのよ」
エリカと出会い、自身の倫理観を試されるマーサ刑事ですが、二人の関係はお互いにどんな影響を及ぼしたと思いますか?
■ジョディ:「彼らの関係はとても美しいわ。素晴らしいと思うのは、二人の仲は親密であるのに、それがセクシャルな親密さじゃないということ。彼は彼女によって変わっていく。気付いているかどうかわからないけれど、お互い惹かれあっているの」
ブレイブ ワン
エリカ・ベインの恐怖を克服する自警行為は、復讐を果たした後も続くと思いますか?
■ジョディ:「それは私たち製作側でも疑問に思って良く話し合いました。私の意見は、彼女は全くの別人になったのであって、元の自分には戻ることはできないということ。つまり、作品の中で『私の中の別人が私自身に成り代わった』とあるように、私の答えはイエスよ。彼女は自警行為を続けると思います」
報復をしてもエリカの心は満たされないし、なんの解決にもならないという意味で、9.11以降のアメリカを象徴している暗喩的な部分は本作品にありますか?
■ジョディ:「ええ、よく似ていると思います。そして、映画『タクシードライバー』が、ベトナム戦争後の病んだアメリカを象徴していたのと共通しているかもしれません。例えば、NYという都市は警察もたくさんいるし、タイムズスクエアはディズニーランドみたいでしょう。でも、それでも人々は安全だと感じない。「恐れ」がすべてを作り出してしまうのです。何か恐ろしいことが発生して、それをどうやって処理するかわからないと、人々怒りを感じる。これが今のアメリカの状態だと思うし、この作品で隠喩していることだと、多少言えるかもしれませんね」
ニール・ジョーダン監督とのお仕事はいかがでしたか?
■ジョディ:「大好きな人です。ずっとお仕事がしたかったので、すばらしい機会をいただきました。とっても協力的な人だし、アイルランド人独特のセンスを出してくれます。この作品が彼の手によって撮られたことを、本当に誇りに思っています」
ブレイブ ワン
作品の重要なキーの一つに「恐怖」があると思いますが、ジョディさん自身、「恐怖」を克服するためには何が必要だと思われますか?
■ジョディ:「私の場合は、映画の中で恐怖を克服するわ。スクリーンの上で、恐ろしいと思うすべてのことを経験するんです。それで、主人公になって、私だったらどうするか、どうやって生き残れるかを考えるの。そうやって心の中を浄化するのよ」
輝かしいジョディさんのキャリアの中で、本作品はどのような位置づけになると思いますか?
■ジョディ:「今までのたくさんの映画の中で一番誇りに思っている作品です。この映画がとても好きよ。今までよりも、熟した演技ができていると思うわ。私もうすぐ45歳になるし、20代の時の演技とはもちろん違ってくるものね。昔から倫理観というテーマには興味があったけれど、それに対する疑問は今と比べるともっとはっきりしていました。でも、年齢を重ねるにつれて、その答えはぼやけ、複雑なものになってきたと思うわ」
次回作は?
■ジョディ:「もう撮り終わったわ!『Nim’s Island』という子供向けの冒険映画で、オーストラリアで撮りました。今回の映画とはぜんぜん違って、科学者の父親と孤立した島に住む、小さい女の子が主人公のお話です。とっても楽しい映画よ」
これからのお仕事の展望はありますか?
■ジョディ:「わからないわ。私はもう40年以上も俳優をやってきているのよ。でも今一番興味があるのは、もっと監督として映画を製作していきたいということね。俳優として映画に携わる時は、監督がどのように、何をしているのかをそっと観察しているのよ」
GyaOビューアーにメッセージを一言下さい!
■ジョディ:「GyaOをご覧のみなさん、ジョディ・フォスターです。私の新しい映画、『ブレイブ ワン』を是非見てください。まもなく公開です!」
二度にわたるアカデミー主演女優賞を獲得しているジョディ・フォスター。そんな彼女が今までで一番!とコメントした本作品は絶対に見逃せないでしょう。見る者の倫理観を試す主人公エリカの行動。あなたなら、どうしますか?はっきりとした答えが出せるでしょうか?
取材・文:田辺奈緒
『ブレイブ ワン』
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:2007年10月27日
劇場情報:サロンパス ルーブル丸の内他全国ロードショー
公式HP:http://www.brave-one.net
■あらすじ
ニューヨークでラジオ番組のパーソナリティーをつとめるエリカ・ベイン。ある日婚約者デイビッドと散歩に出かけた彼女は暴漢に襲われ、瀕死の重傷を負う。婚約者の死を知り、行き場のない悲しみと恐怖に打ちのめされたエリカは、一向に進展を見せない警察の捜査を信頼できず、自ら拳銃を手にする。そしてその日を境に、彼女は別人となる……。
■人物紹介
ジョディ・フォスター
1962年カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。14歳で出演した『タクシードライバー』(76年)の少女娼婦アイリス役で注目され、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた。これまで、レイプ被害者を熱演した『告発の行方』(88年)、FBI特別捜査官を演じた『羊たちの沈黙』(91年)の2作品でアカデミー賞主演女優賞を受賞している。最近では、仏映画『ロング・エンゲージメント』(04年)に出演したほか、『フライトプラン』(05年)、『インサイド・マン』(06年)に主演。最新作は『Nim’s Island』で、08年に公開予定。



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