『河童のクゥと夏休み』原恵一監督 インタビュー

2007.08.10

“何かを感じてもらえる映画”原恵一監督 インタビュー
出席者:原恵一監督
原恵一監督
子供だけでなく大人も楽しめる感動の大傑作『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』『嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』を手がけた原恵一監督がまたまた素晴らしい作品を世に送り出した!原監督が長い間温め続けてきた『河童のクゥと夏休み』は、突然現代の東京に蘇った河童のクゥと小学生の少年・康一との交流を通して日常の喜び、家族、友情、人とのつながりを暖かく描きつつ、今の日本が抱える様々な問題をも浮き彫りにする。
原監督と原作となる児童文学(「かっぱびっくり旅」木暮正夫・作、こぐれけんじろう・絵)との出会いは今から遡ること20年前。


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「人間と環境、リアリティのある子供たち。原作の面白さに自分のアイディアを加えれば、描きたいことが描けると思いました」
そして、20年の時を経て、遂に映画化が実現する運びとなった。
「今回多くのメッセージを入れられる滅多にないチャンスだったので、きちんと向き合う覚悟で望みました」
本作のメインテーマである友情、家族愛、成長は、今まで原監督が手掛けてきた『クレヨンしんちゃん』でも描かれているが、今回はさらに一歩踏み込んで「自分にとって切実なこと」をテーマにしているという。
「監督は選択をする仕事です。今回は面白いか、面白くないかではなくて、自分にとってどれが一番切実かを考えました。道Aを選んだら面白いことが描けそうだけど、道Bを選ぶと自分にとって切実なことが描ける。だったら道Bを選ぶという感じでした」
切実なテーマのひとつが環境破壊。山登りが好きだった原監督は山に行くたびに環境破壊を感じていた。
「政治の問題になってしまうのですが、一般の人が守りたいと思っても政治のレベルになるとどうにもならない。必要の無いことをやってお金を儲けている人がいる。本作の冒頭、江戸時代のシーンにそういうニュアンスのものを入れてみました」
また、現代日本の重大な問題のひとつがいじめ。主人公の康一は河童クゥと暮らすことによって好奇の目で見られ、いじめる側からいじめられる側にまわってしまう。しかし、クゥとの生活が康一を成長させる。
「いじめはいつの時代にもありました。ただ、死を選択する子供は今ほど多くは無かった。大人が気付いてあげて、なんとかしてあげないといけない。昔だったら大人に相談していましたけど、今はそれすらできない。そんな子供たちの心の寂しさを想像するだけで、悲しくなります」
環境破壊、いじめ問題は今の社会を作った大人たちに責任があることを暗に示すかのように、『河童のクゥと夏休み』には身勝手な大人たちが登場する。
「東京の街並みを見て美しいと思いますか?望んでいなかったかも知れませんが、現実としてこうなってしまったのは、多分、僕ら大人たちの責任だと思います。子供のいじめ問題も、今の子供はおかしいと言っている大人がおかしいから、子供もおかしく見えるのだと思います。大人が変わらないと子供だって変わるわけがない」
しかしながら、原監督はあくまでもクゥと康一とその家族たちの日常を柔らかく描くことに徹し、社会的なメッセージを強調してはいない。
「声高に自然を守ろうというのは簡単ですけど、それでは届かないですし、反感を生む可能性もあります。でも日本の美しい自然が守られて欲しい。より多くの人がそう思ってくれれば少しは変わると信じています。でもあんまりそこばかりを強調しても鼻に付いてしまいます。それだけが言いたい映画ではありませんし、娯楽というスタンスを放棄していないつもりです」
また、シリアスな部分を中和させるために、笑いが随所に散りばめられている。原監督は『クレヨンしんちゃん』時代からあまり笑いが得意ではなったというが、見事にアクセントとして有効活用している。
「『しんちゃん』のお陰で子供の笑いのツボは訓練されましたね。今回は『しんちゃん』の時みたいに義務でギャグを入れるのは辞めようと思って、自然に生まれてくるユーモアを重視しました」
『クレヨンしんちゃん』が日々の日常をギャグへと昇華させているように、本作でのユーモアも日常を切り取ってみせることから生み出される。
「日常の中にある面白さや切なさを描くことに喜びを感じます。アクションや壮大なファンタジーにはあまり興味が持てなくなってきました」
とは言うものの、原監督は静から動へと転じるアクション演出、そして、日常とファンタジーの融合が上手い。そこに笑いがあり、さらに“泣き”が加わる。しかし、その“泣き”は、“泣ける”=“良い映画”という傾向がある昨今の日本映画界の中において一線を画している。
「安易に涙を絞りたいとは思いません。でも結局やっていることは他の映画と一緒です。結局自分なりに考えて、こうしたら見た人は感動するだろうと思って作っていますから。ただ、最初から泣ける映画を目指すのは間違っていると思っています。さっき言った切実がまた出てくるのですが、自分にとって切実なエピソードを描くと、そういう方向に物語が流れていきます」
観客を泣かせるために安易に登場人物の命を絶たせる映画が多いが、原監督の言う切実とは“死”ではない。監督の切実な思いは全てクゥに託されている。そのクゥを通して監督の思いが伝えられた時、楽しさ、暖かさ、喜び、愛おしさ、勇気、悲しみといった様々な感情が去来し、涙が頬を伝う。そして、原監督作品で描かれ続けてきた“未来への希望”も強く感じることが出来る。しかし、この“未来”への思いを問うと原監督からは意外な答えが返ってきた。
「それがあまり意識したことがないんですよ。実は先日、原作本のイラストを書かれたこぐれけんじろうさん(原作者木暮正夫さんの息子)と対談をしたのですが、こぐれさんが“原さんが作っている作品は未来が描かれていないけど、なんとなく未来を感じさせる”とおっしゃってくれました。その言葉が自分も嬉しくって、これからは調子に乗らない程度に意識していこうと思いました」
無意識のうちに“未来”を感じさせていたとは、ある意味凄いですが、最後に本作の魅力について聞いてみた。
■原「子供にも大人にもお年寄りにも見てもらいたいと思って作りました。欲張りと思われるかもしれませんが、それが嘘偽りの無い自分の切実な思いです。物語の中ではっきりした答えを出してはいなのですが、見た人がより良いことを考え、想像できると思います。あと、鑑賞後は見る前よりも良い気分になって帰って頂ければと思います」

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『河童のクゥと夏休み』
公開日:2007年07月28日
劇場情報:シネ・リーブル池袋ほか全国にて
配給会社:松竹
オフィシャルサイト:http://www.kappa-coo.com/



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